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第2話

「……君?」 「あ……」  自分はまた、夢を見ているのだろうか。  目が覚めると、そこはもう救急車ではなかった。  1人用の小さな病室に白いベッド、同じ色の天井と風でやさしく揺れているカーテン。折れた腕にも同じ色の包帯が巻かれている。  そして、見覚えのある男の姿があった。 「先生……?」  どこへ行こうというのだろう。  陣内は反射的に身を反り、ベッドを降り、どこかへ……遠くへ行こうとしていた。  しかし、どうやら、包帯が巻かれているのは腕だけでなく、足にもひびが入っているのか、包帯が銀色の金具でとめられていた。  逢坂は陣内の折れていない方の腕をとった。 「あ……」  優しくて、弱っているものを労わるような手つきだった。  何だか、分からないが、涙腺が緩んでしまう。今すぐにでも声を上げて、陣内は泣いてしまいたかった。 「君から電話があったんだ」  熱くなる目元、何かが詰まったような鼻。  それに、嗚咽。  陣内は電話をかけた覚えはないから、おそらく、あの時、アスファルトへ叩きつけられた衝撃でボタンが押されて、電話がかかってしまったのだろう。  しかし、だからと言って。逢坂にかかるなんて。それはなんて、皮肉なのだろうか。 「最初は何も聞こえなくて、電話を切ろうかと思ったんだけど、隊員の人から事情を説明されて……」  目を背けていて、陣内には逢坂の表情は分からない。  ただ、その声は苦しげに聞こえた。 「今まで悪かった……」  ああ……と陣内は思った。  彼が自分を弄んだ理由。それには、やはり、理由があったのだ。 「どうして、あんな事をしたのか……聞かせてもらえないですか?」  陣内は少し戸惑ったが、その言葉を投げた。

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