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第4話

「話し振りから、君は人から嫌われているのには慣れてそうだったからね」 「だから、あんな事を?」 「ああ。俺の事、間違いなく、嫌いになっただろう? しかも、半ば、脅しのような真似もしたしね……」 「……」 「だから、君の抱えたものを知って、君の目の前から消えるまでは、俺は悪いヤツ。それだけは守ろうと思った」  しかし、それは守れなかった。  一呼吸置き、逢坂は告白をする。 「でも、君には嫌われたくないと思ってしまった」  窓から差し込む光に照らされた逢坂の姿は儚く見えた。  表情は絶妙な光と影で慈愛に満ちていて、髪は光に透き通るくらい光る亜麻色……まるで、人間の姿を借りた何者かであるように瞬きと共に、消えて去ってしまいそうだった。 「許してくれとは言わない。俺を好きにならなくて良い。ただ、君に謝りたかった」  この腕さえ折れていなければ、この足さえ動けば……陣内は思った。  この気持ちが愛情だとはまだ、確信できない。  ただ、それが何だと言うのだろう。  今、目の前にいる、自分に嫌われたくないと告げた男を抱きしめたいと思った。 「先生。俺は先生を嫌いなんかじゃないですよ」  来てください、と陣内は優しい声で言った。  自分でもその優しさに驚く。 「陣内、君……?」  陣内は折れていない方の手で、逢坂の指に触れる。  触れた指はいつものように、長くて、綺麗なものだったが、冷たかった。

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