正直なところを言うと、陣内は大人しい感じの女の子が好きだった。 　今までも、つき合ってきたのは女性だった。 　それが空気のように心地の良い柚木のような男や自分を振り回すけど、どこか気になるような逢坂のような男だった事ではない。 　しかし、誰とつき合って、誰とずっと一緒にいたいのか。誰か１人しか好きになってしまってはいけないのだとしたら……自分は誰を選ぶだろう。 「どうして、俺なんだ？」 「え？」 「あ……どうして、柚木は俺がその、好きになった？」 　思うだけで、言う筈ではなかった言葉は水が零れるように落ちる。あの柚木の告白を聞いた後の乱れた感情が嘘のように落ち着いていた。 　そんな陣内の問いに柚木はまた軽やかにハンドルを切ると、適当な道に入った。 「ゆ、柚木？」 　陣内がバイクで走った時には一気に突っ切った森に入り、山頂へと車を走らせた柚木。 　その様子はまるで、何かにとり憑かれたように無心で無言だったが、車のエンジンを切ってしまうといつもの柚木のように見えた。 「どうして……か」 　嘲り、怒り、悲しみ、底のない空しさ。 　その口調は一言では表せないほど、色んなものが含まれているようだった。 「ジンは覚えていないかも知れないけど、高校の頃、進路相談に乗ってくれた事があったよね？」 「しんろそうだん？」 　陣内は思い返すようにその言葉を繰り返す。 　高校３年生。今から４年も前の話だった。