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第11話
「僕はもうすぐ東京に行こうと思う。生まれてから初めて……自分で考えて、自分の意思で決めて……」
柚木から告白を受けた時は東京行きを「考えてみる」という事だったが、どうやら、行かないという選択肢を捨てたらしい。
そんな柚木自身が悩んで決めた事すらも柚木は「ジンのお陰」だと言い、笑う。その穏やかな笑顔に陣内は逢坂を思った。
それは柚木に対してはすまない事だとは思ったが。
「だから、東京へ行く前に俺に気持ちを伝えて?」
耐えがたくなって、言葉にする陣内。
ずっと独白を続けていた柚木は少し驚くものの、弱く頷いた。
「自己満足だと思う?」
「いや……」
「じゃあ、迷惑とか?」
「それも違う……」
明るく自分の事を言い切る柚木へ困ったように陣内は否定だけを呟く。
その理由は柚木の言う迷惑という事ではない。むしろ、そこまで、柚木に思われていた事に嬉しさと戸惑いの入り混じったような思いだった。
だが、それ以上にもうこれ以上、自分の事で柚木を苦しめるのは本意ではなかった。
「柚木、ありがとう」
その言葉はごく自然に。水が上流から下流へと流れるように出た。
それから、自分の今の気持ちも。
「でも、気になる人がいるんだ」
「気になる人……」
「ああ、柚木も知っている人だ」
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