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第15話
駅まで帰って、切符を買う。
行き先は明慈大学のあるこの駅から1つ後の駅。
運良く、陣内が乗ろうと思っていた電車はホームに来ていて、駆け込み気味に乗り込む。電車は20分走ったところで駅に着いた。陣内はこの駅にも2回、来た事があった。
1回目は逢坂と初めて会った時、2回目は逢坂に例の録音機の件で呼び出された時。
特に、逢坂と初めて出会ったタクシー乗り場や初めて食事をした大学のある通りにある古い畳の店を通りすぎると、同様にその時々で思った色んな感情が通り過ぎていった。
そして、その末に思ったのは逢坂と最後に会った時に彼を引き止めなかった事を悔いる。逢坂が言った訳じゃないが、感覚として、どこかで分かっていた筈なのに。
引き止めなかった。
そんな後悔と今すぐ会いたいと思う。強くて、確かな熱望だけ。それだけで陣内は治ったばかりの足を酷使して走っていた。
「あ……」
陣内が大学へ着いた時、彼はある事に気づいた。
大学の正門には槍のように鋭い先端をした鉄格子の大きな扉があり、休日に進入してくる者を拒んでいるようだった。
勿論、先生や学生が歩いている姿は見えないし、正門の横にある守衛室にも誰かがいる気配がない。
「もう……だ……」
陣内は門の前のアスファルトへ座り込みそうになるのを何とか、抑える。電車に乗っている時以外は止まる事なく走り続けてきた足もよろけて、痛いと訴えていたが、心がもう限界だった。
今すぐにでも逢坂に会いたくて……それが、どんなに叶わない事でも諦める事ができない。
嫌だ、嫌だとまるで、子供のように思うのを陣内は止められなかった。
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