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One night-1
「彼と同じものを」
「司さん」
ぼんやりと夜景に視線を遊ばせていた圭人が振り返る。軽く手を上げて司は隣りに滑り込んだ。
「いつも君を待たせてばかりだ」
「いいんです。待つのは嫌いじゃないから」
付き合い初めて三か月。なかなか逢う時間を作れず、こうして深夜にいつものホテルのバーで待ち合わせ、そのまま泊まる。あまり外泊させるのはよくないと思ってはいるが、逢えば離せなくなる。圭人も家のことを口にはせず、最近は当たり前のように泊まっていくようになった。
レモンの爽やかな香りが鼻を掠める。バーテンダーが果汁を落としているところだった。
「ところでなにを飲んでいるの?」
目の前に置かれたカクテルグラスの中には淡い乳白色の液体が揺れている。
「マイアミ」
「そういえば昔、マイアミを舞台にしたドラマを観てた」
「そうなんですか?」
二人きりの時以外は敬語を使う。止めさせてもよかったがベッドでのギャップが面白く、司は圭人のしたいようにさせていた。
「司さんのこと、もっと知りたいな」
「なんでも教えてあげるよ」
司の前にグラスが差し出される。軽く圭人のそれに合わせて一気に飲み干す。それを見て圭人は苦笑した。
「司さんはお酒に強いんですね」
「おまえが……」
そう言おうとして口をつぐむ。圭人はわざと酔ったふりをして司を誘った経緯がある。本当に酒に弱いのかそれを知る由も無い。本当の圭人をまだ自分は知らなすぎる、と司は今更ながら思った。
「……おいしい」
艶のある髪。涼しげな目元。熟れたような唇。整えられた爪先。細すぎず締まった色白の身体。何度抱いても飽きることがない。圭人の身体はどこまでも司を誘い込む艶やかな花のようだ。
司はふと以前に一度口にしてはぐらかされた質問をしたくなった。
「君に聞きたいことがあるんだが」
「なんでもお答えしますよ」
「……なんでも、ね」
「司さん?」
圭人の腕を取り立ち上がる。もう前戯は十分だ。
「部屋に行こう」
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