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2 友人康介
登校後、クラスに入ると数人が塊になって窓際で盛り上がっていた。ガヤガヤとした空気が教室に溢れている。僕はその光景を見て足を止めた。
僕の席は窓際の一番後ろ。邪魔だな、と少しムッとしながら盛り上がっている人集りを避け自分の席に座った。
始業のチャイムまでの時間は読書をすると決めている。でも、本を開きかけるとすぐにその盛り上がっている塊の中から元気な声が飛び出してきた。思いがけず名前を呼ばれ顔を上げると、その輪の中心にいた人物が僕に向かって手を振った。
「竜 おはよー!」
人だかりの中から元気に僕に挨拶をしてくれたのは康介 だ。幼稚園の時から仲良くしてくれてる僕の幼馴染。いつも元気で明るくて、自然に友達が集まってくる、そんな康介はいつもムードメーカーで楽しい僕の大切な友達。
僕が気兼ねなく話ができるのは康介だけだった。こうやって毎日挨拶をしてくれるし、僕がクラスから孤立しないように気を使ってくれているのがよくわかる。優しくて頼りになる、僕のただ一人の友達。
「なぁなぁ、 竜はD-ASCHってバンド知ってる? 超かっこいいんだよ! ちょっとこっち来いよ」
そう言って康介は僕をみんなの輪の中へ導いてくれた。康介の言うそのバンドとやらには全く興味はないけど、わざわざ呼んでくれた手前、しょうがないから僕はその会話に参加する。
康介の話を聞いていると、どうやらこの学校のひとつ上の先輩達がやっているバンドの話らしい。
康介は同じ高校に通う二つ上の兄がいる。そのお兄さんにライブに連れて行かれて一目でファンになったと目を輝かせて僕に教えてくれた。興奮し顔を紅潮させ、くるくると表情を変えながらみんなにD-ASCHの凄さを語っている康介の様子が面白くてつい口元が緩んでしまった。
「おい! ニヤニヤしてないでちゃんと聞けよ! 竜」
「あ……ごめんごめん、聞いてるよ。そのバンド凄いんだね」
実際たいして話は聞いてなかったけど、興味がなさそうな顔をするのも悪いと思ったので僕は適当に返事をした。そんな僕の言葉に康介はパアッと表情を明るくし「今度ライブに連れて行ってやるから楽しみにしとけよ!」と嬉しそうに僕の肩をポンと叩いた。
「え? いや、別に……」
始業のチャイムが鳴り、みんな一斉に自分の席に戻っていく。せっかくの朝の読書タイムが見知らぬバンドのライブに行くという面倒な約束ごとに変わってしまった僕は、ちょっと困ったな、と思いながら席についた。
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