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4 渡瀬竜太という男
渡瀬竜太──
竜とは幼稚園の時からの友達だ。幼稚園で初めて竜と会った時の事は今でもよく覚えてる。
竜は人と接するのが苦手らしく、いつも一人で遊んでいるか先生にくっついて遊んでいた。ちょっと髪が長くて、ひょろっとして小さくて頼りない印象。だから俺がこいつのお兄ちゃんになって遊んであげるんだ! って思っていた。兄貴のいる俺は、弟が欲しかったんだ。そう、お兄ちゃんぶりたい年頃だったし、何より竜とは友達になりたかったから。
俺が声をかけると、最初はもじもじしていたものの慣れてくると沢山笑ってくれた。正直竜の笑った顔を見たことがなかったから、初めて笑顔を見た衝撃は忘れられない。大袈裟かもしれないけど、本当に衝撃的だったんだ。だって表情筋どうした? ってくらい笑わなかった奴が、俺と遊んでて笑ってくれるようになったんだぜ? そんなの嬉しいし可愛いって思うの無理ないだろ? 俺は幼心にドキドキと不思議な感じがした。
小学校に上がっても竜太は俺とばかりつるんでいて、他の友達はいないみたいだった。俺がいれば他の奴とも話をするけど、やっぱり自分からは関わろうとはしなかった。
一度だけ、中学に入ってから竜に聞いたことがある。
「竜って俺以外に友達いる? 楽しい?」
ほんと今更なんだけど……今までなんとなく聞けずにいた事。俺だったら一人は寂しいと思うから。友達とワイワイやっていたいと思うから。
余計なお世話なのかもしれないけど、竜ももっと俺みたいに他にも友達を作ればいいのに、と思ってしまったんだ。
「へ? 友達? いないよ。でも康介が話しかけてくれるし、寂しいなんて思ったことないよ。何を話していいかわからないし面倒くさい。一人でいるほうが気が楽だし、友達なんて別にいらない」
いつもと変わらない顔をして、竜はそんな風に俺に言った。負け惜しみとかそんなんじゃない。長く竜と一緒にいたからわかる、心の底からの竜の本音。竜にとっては当たり前のこと。
面倒くさい……
「そっか」
自分から聞いておきながら、竜の言葉に俺はショックを受けていた。
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