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5 放っておけない友人
その話を聞いてから余計に竜の事が放っておけなくなった。人に対して無関心だなんて、それは凄く寂しいことだと俺は思う。
無理に関わりすぎると面倒くさがれて竜は俺から離れて行ってしまうんじゃないかと思い、微妙な距離感を保って付き合うようにした。ずっと一緒にいたから俺と竜は親友だと思っていたけど、もしかしたら竜にとってはそうじゃなかったのかもしれない。そう思ったら辛かった。
竜は俺に心を開いてくれてるのかな──
高校に入っても同じだった。
でも幸運なことにクラスが一緒になれた。やっぱり竜は一人でいることが多かった。俺は竜がクラスの皆から変な奴だと思われないように、ちゃんとクラスメートと関われるように、なるべく声をかけるよう心掛けた。クラスメートもいい奴ばかりでイジメみたいなこともなく、竜は自分からは皆と深く関わろうとはしないけど、それなりに楽しそうに過ごしていた。
昼休み、竜は一人で過ごしているのかと思い声をかけた。
「お天気で気持ち良さそうだから屋上行こうと思って」
嬉しそうな表情を見せる竜に俺も気分が良くなり、急いでパンを買い竜を追って屋上へ向かった。扉を開けて探すと奥で竜が俺に気が付き手を振っている。
太陽の光が反射して、その笑顔がやたらキラキラして見えた。
竜と並んで座り、俺のくだらない話をふんふん聞きながらお母さんが作ってくれたであろう美味そうな弁当を竜は頬張る。うまそうだな、と思いながらぼんやりと眺めていたら、俺は大変なことを思い出してしまった。
今日はバスケ部の試合!
俺は部活には入ってないけど、サッカーやバスケ部などの運動部によく声をかけられ助っ人として参加をしていた。今日もバスケ部のマネージャーから練習試合に出てくれと頼まれていたのを思い出す。それなのに今日の昼飯は軽すぎるパンのみ……こんなんじゃ力が出ねえ。パンだけじゃ力出ねえじゃん! と嘆いてたら、竜が哀れみの目で俺を見つめた。
「康介、僕の弁当食べていいよ。はい、これあげる」
竜がニコニコして俺の口元に唐揚げを突き出してきた。これは「あーん」して食えって事かな?
竜は箸で唐揚げをつまみ俺の口元まで持ってきて早く食べろと言わんばかりに微笑んでいる。
「え? あ、ありがと」
戸惑いながらパクっと唐揚げを食べると、竜はくしゃっと可愛い笑顔で俺を見た。そのあとも、竜は次々におかずを俺の口元に持ってくる。
「おいしいでしょ? 僕はあんまりお腹すいてないから遠慮しなくていいからね」
竜の言う通り確かにどれも美味しいしんだけど、いちいち食わせてくれなくても自分で食べられるってば……
俺は嬉しそうな竜に何も言えず、 恥ずかしかったけどされるがままおかずをたくさん分けてもらった。
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