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6 衝突
午後の授業が終わり僕は部活へ向かう。僕の所属している美術部の部室は体育館の横を通るから、康介が助っ人で入っている試合を少し覗けるかな? と思い近付いた。
盛り上がっている歓声が廊下まで聞こえてくる。足を止めて体育館の中を見てみるとちょうど康介がダンクシュートを決めたところだった。
チームの仲間と笑い合って手を叩く。まるでバスケ部の一員のように打ち解け、息もピッタリ。康介のこういう所、本当に凄いなと思う。なんであんなに上手なのにバスケ部じゃないんだろう。康介がサッカーやテニスや色んな部活の助っ人をしてるのを見る度に思うけど、どのスポーツも部員を差し置いて康介の方が上手いと思う。色々なスポーツを楽しみたいから特定の部活には入らない主義らしいけど、やっぱり沢山の人から誘われているみたいだった。フワフワしてるな、とも思うけど、それも康介らしくて僕は好きだ。
体育館を過ぎ、ぼんやり歩いていると突然誰かに突き飛ばされてしまった。突き飛ばされた……というか、ぶつかったのかな? ぶつかった衝撃で思いっきり後ろに吹っ飛んでしまったらしく、派手に尻餅をついてしまった。もうびっくりして何が何だかわからない。
「痛ってえ!」
僕にぶつかったであろう相手が大きな声を出す。
いや……痛いのはこっちなんだけどな。尻餅ついたお尻も痛いし、衝撃で目眩もする。びっくりし過ぎてドキドキしてるし、とにかくすぐには起き上がることができなかった。僕は尻もちをついたまま恐る恐る顔を上げると、眉間に皺寄せたデカイ男が僕のことを見下ろしていた。
「え……?」
見下ろす男は髪が金髪。しかもところどころ色が違う。同じ制服を着ているからこの学校の生徒だとは思うのだけど、僕や周りの生徒とはかなり違って異色に見えた。
デカイ上になんだか派手で、ちょっと怖そう。かなりの高い位置から僕の事を見下ろすその人は、怖い顔から一変して「あ? 悪りいな! 立てる?」と言いながら、少しだけ優しい表情を見せた。
「ありがとうございます……大丈夫です」
差し出された手を取らず、 一人で立ち上がろうとすると、その大男の腕が僕の脇に入り軽々と抱き起こされてしまった。突然のことでびっくりして言葉が出ない。
「嘘だろ? お前、軽いな! それにそんな前髪長くて前見えんのか? 見えてねえだろ。だから人にぶつかるんだよ……ったく気をつけろよ」
僕の顔を覗き込むように見ながら大きな声でそう言うと、その大男はすたすたと歩いて行ってしまった。
え? なんで? 僕が悪いの?
確かにぼんやりはしていたと思うけど、急にぶつかってきたのはあっちじゃないか!
何だか僕はモヤモヤしたまま、お尻についたゴミを払って部室に向かった。
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