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14 キス

 周さんのこういう行動はきっと挨拶みたいなものなんだ。自分から人に話しかけたり触れ合う事が無かった僕にとってこんな事は驚きの連続だけど……「そうなんだ!」「こういう人なんだ!」と思えば納得がいく。僕が経験したことがない触れ合いだったからこんなにドキドキしちゃうんだ。そう自分に言い聞かせるようにして僕は自分を納得させた。  康介もかっこいいけど、こういう風にドキドキはしない。それは小さい頃から一緒にいて家族みたいなもだから。 「周さん、僕ちょっとトイレ行って来ます」 「ん? じゃ俺もいく」  二人で立ち上がり廊下に出て、トイレに向かった。初めて入る店だからトイレの場所もわからなかったけど、周さんも一緒に来てくれたから良かった。そう思ってトイレに入ると突然周さんに肩を掴まれ壁際へ押されてしまった。  周さんの左腕が僕の顔の横に伸びる。周さんとトイレの壁に挟まれるようにして僕は逃げ場がなくなってしまった。  ああ……これって噂の壁ドンだ。  驚きつつ、ぼんやりとそんなことを考えて固まっていると、周さんのもう一方の手が僕の顎に触れた。何? と思う間も無く、周さんはチュッと唇を重ねてきた。  何が起きたのか一瞬わからなかった。  これは挨拶……じゃないよね?  僕、男だし…… 「あ、周さん? 」 「あ、悪りい。思わず……まあ 気にすんな」  思わず、ってなんで?  気にするなと言われても、気にしちゃうじゃん!   僕は益々周さんのことがわからなくなってしまった。

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