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28 散髪

 日曜日──  周さんに髪型を指摘された。初めて自分の容姿を気にして美容院に行こうと思った。今までは単に「伸びたら切る」と言う理由で散髪に行っていただけ。おまけにあまり変化があっても違和感しかないからと、バッサリと切るようなことはしなかった。  前回床屋さんに行ってから随分と経つ。でも今回は床屋ではなく美容院だ。美容院ならきっと僕に似合う髪型にしてもらえるし、少しは周さんみたいにお洒落にしてもらえるかも、と期待を込めて……  月曜日──  教室に入ると、途端に視線を感じる。康介も僕を見て目を見開いて驚いていた。そんなに僕、おかしいかな……と不安になった。 「竜! 髪どうした?……すげぇ似合ってるじゃん! びっくりだよ!  雰囲気変わったな! かっこいいっ」  興奮した康介が僕の頭を軽く叩いた。てっきりおかしいのかと思って不安だったけど、康介の様子を見てそうじゃないとわかって安心した。 「前ちゃんと見えてんのかよ、ってくらいのボサボサ前髪より断然こっちの方がイケてるから!」  康介の騒ぎっぷりにいつのまに他のクラスメイトも集まってきた。こんなに自分が注目されることなんてなかったからちょっと照れくさい。思いがけず注目を浴び、少しいたたまれなくなってると急に誰かに腕を引っ張られた。 「えっ? 」  誰かと思い顔を上げて見てみると、怖い顔をした周さんが僕を見ていた。そのまま無言で僕の腕を引っ張り、ズカズカ歩いてく。  怖い顔。何か怒っているのかな? 「周さん? どうしたんですか? どこに行くの?」 「……屋上」  口数も少なく、周さん何を考えているのかわからない。僕は緊張しながら周さんについていくしかできなかったけど、屋上につくなりギュッと抱きしめられてしまい、ますます訳がわからなかった。 「え? 周さん?」  周さんが僕の顔をまじまじと見つめた。 「お前、髪どうした? もしかして俺が言ったから切ったのか?」 「はい。えっと、どうですか? みんなは褒めてくれて僕嬉しいんだけど、周さんが喜んでくれるともっと嬉しいです……」  怖い顔をしてるから、もしかしたら気に入らなかったのかもしれない。そう思ったら悲しくなった。 「だめ……でしたか?」 「あ? そんなわけあるか! 似合ってるって! うん、かっこよくなったな。たださ、他の奴らが竜太のかっこよさに気付いたのがなんかムカつくんだよな」 「そんなことで……ふふっ」 「なんだよ! 笑うなよ!」  周さん、無茶苦茶言ってる。でもなんか凄い嬉しかった。

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