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30 戸惑い

 まただ──  今日も靴箱に手紙が入っている。今週に入ってこれで二回目。手紙の内容はもう察しがつくけど、見ないわけにはいかず僕はその場で手紙を開封した。 『放課後、第二校舎の裏』  手紙の中身を確認すると、くしゃっと乱暴に鞄にしまった。  放課後僕は重い足取りで校舎裏へ行く。この前とまた同じだろうか。呼び出された場所に着くと、そこにはガタイのいい生徒が一人で佇んでいた。 「……あの、僕に何かご用ですか?」  僕より遥かに体格も良く、威圧感に体が強張る。見た目も怖そうでちょっと嫌だな、と警戒した。 「ご用ですか? じゃねえよ! お前、俺と付き合わねえ? 悪いようにはしないぜ」  そもそも男同士だし、そんな自信満々に言われても僕はこの人のことを何にも知らない。この前の人は自信がなさそうに僕に告白をしてくれた。だからすんなり「ごめんなさい」と断ることが出来たけど、この目の前の人は強引そうでどう言って断ったらいいのかわからなかった。 「おい! 聞いてんのかよ。なぁ、いいだろ? お前付き合ってるやついないんだろ? 俺と気持ちいいことしようぜ?」  どんどん迫ってきて、思わず後ろに下がった僕は壁際に追い詰められていく。  僕は周さんの事が好きだけど、付き合ってるわけじゃない。きっとお互い好きあってはいるのだろうけど……あれ? 僕らの関係は何なのだろう。 「どうすんだ? 俺と付き合え……あっ? おいっ! 待てって!」  あまりの強引さにどうしたらいいのかわからなくて、僕は全速力でその場から逃げ出した──  最近、康介みたいに僕にかまってくれるクラスメイトも増えた。そしてどういうわけか男からの告白も……  周さんや修斗さんは大好きだし大丈夫なんだけど、クラスメイトは正直まだ気を張ってしまう。なんで急に親しくしてくるのだろう? 特別親しかったわけでもないのに急に友達ぶって接触してくるのは何でだろう。  僕は放っておいてほしいのに。  頭が痛い……  学校が楽しかったはずなのに、最近は行くのがしんどいと思ってしまう。人との関わりが面倒くさい、煩わしいと思ってしまう。毎日学校の靴箱を開けるのが怖かった。  康介が僕の顔色を見て心配してくれる。元気がないからと学校帰りに寄り道をしたりしながら話を聞いてくれようとしてるのがわかり申し訳なく思ってしまう。正直僕は経験したことのないことばかりでなんて言ったらいいのかわからなかった。  あれからまた、呼び出しをされ告白された。なんで話したこともないくせに僕の事が好きだなんて言えるのだろう。そもそも男だし、僕の何に興味を持つのだろうか。いくら考えてみても理解ができなかった。 「竜? 最近どした? なんか暗くない? あ、いや 元々竜はそんなに明るくはなかったけどな。悩み事だろ? なんでも聞くから言ってみ?」  今日も康介が心配してそう言ってくれたので、思い切って聞いみることにした。 「あのさ、話もした事ない人を好きになるってどういうことなんだろう」 「へ??」 「僕さ、最近喋った事もない知らない人から告白されるんだよね……付き合って下さいって。なんなんだろう。僕は周さんが好きなんだ。だから正直迷惑なんだ」 「お前、はっきり言うね。ちょっと怖いよ。てかいつの間にそんなモテてんだ? しかも男に……まあ確かに竜、髪型変えてイケメンが顔出したからな。周さんのおかげで明るくなったし雰囲気変わったもんな」  周さんのおかげ……確かにそう。僕は周さんたちと知り合ってから、世界が広がって見えた。知らなかったこと、知らなかった感情がたくさんあることに気がつけた。  僕にとって周さんは大切で大好きな人。周さんもきっと僕のことを大好きでいてくれている。  だからこそ── 「ねえ康介、僕と周さんってなんなんだろう」  僕と周さんってどういう関係なのだろう、と疑問に思ってしまった。 「へ? どういう関係? って、お前ら付き合ってるんじゃないの? 周さんからのLOVEビームすごいじゃん。俺には威嚇ビームしか飛んでこないけど」  康介は僕の言っている意味がわからないと言った様子でそう言った。 「ん……付き合うって僕言われてないし。よくわかんないや」 「いやいや、俺だってわからねえよ。どうみたって付き合ってるだろお前ら。とにかくさ、その告白ってやつ! 気をつけろよ? 野郎相手なんだ、強引な奴だっているだろうし……なんかあったらすぐに言えよ? やだなあ、心配だ! 周さんにもちゃんと言っとけよ」

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