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39 登校

 顔の傷もまだ少し残るけど、あまり長くも休んでいられないので学校に行く。今日は家の前まで康介が迎えに来てくれて一緒に登校した。  クラスに入ると遠巻きに視線を感じた。何人かは顔の傷を心配し話しかけてくれたけど、理由を聞かれるもなんと返していいかわからず「ちょっとね……」と言葉を濁すしかできなかった。言いにくそうな僕を見て察してくれてるのか、みんなはそれ以上聞くことはなかった。僕も話したくなかったからそれでいいんだ。そっとしておいて欲しかったからちょうどいい。  放課後僕は先生に呼ばれた。  僕を襲ったのは権藤と橋爪という同じ一年生。権藤は退学、橋爪は謹慎の後また登校してくるらしい。注意して見てくれるそうだけど、もうそんなのどうでもよかった。  正直 早く忘れたい。  早く周さんに会いたかった。  先生からの話も終わり、教室を出ると周さんからメッセージが入っていた。僕は携帯だけ握りしめ、呼ばれた場所へ急いで走る。「旧部室にいるから来い」とひと言だけのメール。それだけで凄く嬉しくて気分が晴れていった。 「周さん!」  周さんは椅子に座り、笑顔で僕を迎えてくれた。会っていなかったのはほんのちょっとの時間なのに、こんなにも周さんが恋しいなんて……僕はどれだけ周さんの事が好きなんだろう。 「竜太、もう大丈夫か? 無理してない?」  周さんは凄い心配そうな顔をして僕を見る。僕は堪らず周さんに抱きついてしまった。  周さんはちょっと驚いた顔をしたけど、ぎゅっと抱きしめ返してくれるから、僕は全身で周さんを感じ泣きそうになってしまった。 「竜太、もう大丈夫だからな。あいつはもう学校には来ない。俺がちゃんと守るから……」  僕だってもう周さんや康介に「ごめん」なんて謝られるのは嫌だ。守られるんじゃなくて自分で自分のことはなんとかしなくちゃ……でもそう言ってくれる周さんの気持ちもわかるから素直に嬉しくて「ありがとうございます」とお礼を言った。 「竜太……」  周さんは僕の頬に手を添え、軽くキスをしてくれた。久し振りの周さんのキス。チュッと何度も啄むように優しく触れる。僕が軽く唇を開くと、遠慮気味に周さんの舌が口内を弄る。それだけで幸せな気持ちになって堪らなくなった。 「……あいつにキスとかされなかった?」  真剣な顔の周さん。瞬間あの時の光景がフラッシュバックして、体が震えてしまった。 「あ、ごめん……早く忘れろ」  周さんは小さくそう呟くと、また唇が重なる。愛しむように優しく、周さんの舌が僕の口内を行き来する。僕もそれに応えるよう舌を絡めた。  大丈夫……  周さんがいるから、こうやって嫌な事を忘れさせてくれるから……  段々と周さんの息が上がる。キスだけでも体がそわそわするのに、僕の首筋に顔を埋めるものだから変な声が出てしまった。 「あ、周さんっ……僕、あっ……それ、ぞわぞわするから、も……もうやめて……」

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