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41 俺の恋人は堪らない
今日竜太が久し振りに登校してきた。
少しは元気になっただろうか。まだ顔の傷が残ってるのが痛々しく、どうしても胸が騒つく。
早く竜太を抱きしめたい……そんな思いを胸に、俺は竜太にメールを送り、旧部室へ呼び出した。
ドアを開けた竜太は、俺の顔を見るなりはち切れんばかりの笑顔を見せる。大丈夫か? と声をかければ、可愛らしく飛びついてくる。自然とキスをして抱擁を交わす。こんなのはお互い好きなら当たり前の行動だ。大好きな子に触れたい、キスしたい、抱きしめたい……エッチな事だって早くしたい。でも竜太はキスをするのも俺が初めて。あまりしつこくキスをしていると、息ができなくなるのか、苦しそうにしてるのがなんとも可笑しかった。
幸せな気持ちのところに不意に権藤の顔が浮かんでしまった。
あいつ、竜太にキスとかしてねぇだろうな? そう思ったら俺は何も考えずに言葉に出していた。途端に竜太が体を強張らせたのがわかり、余計なことを言ってしまったと後悔した。こともあろうに俺があの時の恐怖を思い出させてどうすんだよ! ぎこちない笑顔を見せる竜太に「ごめんな」と謝り、俺はもう一度竜太を抱きしめキスをした。
「……早く忘れろ」
あんな嫌なこと、早く忘れちまえ。俺は優しく優しく竜太の口内で舌を絡める。権藤のしたことを想像するとどうしても怒りがこみ上げてきてしまう。嫉妬と独占欲、いろんな感情を抑え込み、俺は竜太に唇を重ねた。
竜太は俺にしがみつき、辿々しく舌を絡める。時折漏れる吐息がいやらしく、体がムズムズするのかしきりに体をくねらせていた。
俺も正直、男と付き合うのは初めてのこと。男を好きになりこんな感情を持つことだって夢にも思わなかった。でも俺は今、竜太を触りたいと思ってるし、抱いたら竜太はどんな風になるんだろうと思うと興奮してくる。こんな時だから慎重にしたいけど、我慢できそうにないや。
わかっているけど止められない。直接竜太の肌に触れたい。もっと色々してみたい……竜太のいやらしい声が聞きたい。
気付けば俺は夢中で竜太を弄っていた。
急に竜太の手が俺の動きを封じる。何だ? と思ったら、顔を紅潮させて竜太が「待って……」と俺に言った。「分からないことがあるんです」と話し始める竜太に、俺は驚きを隠せなかった。
──俺たちは付き合っているのか?
竜太が言いたかったこととはそういうこと。竜太は俺のことが好きだけど、付き合っているとは思っていなかったらしい。
いや、付き合ってもいないのにこんなイチャイチャするのかよ?竜太の言葉に俺は一瞬自信がなくなった。
俺がちゃんと付き合っていると伝えると、竜太はすごく嬉しそうな顔をした。
「だって男同士だよ。おかしいね、僕たち」
そう言って笑う竜太に少々脱力。でも竜太が俺のことが大好きだとちゃんと伝わってくるし、俺の気持ちもちゃんと伝わっているとわかってる。
だからいいんだよな。これで……
とりあえず、竜太にはきちんと言葉で伝えないとダメなんだって事がよくわかった。そして結局今回もなんだかんだお預け状態でイチャイチャが終わってしまった。
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