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44 チェックイン

 圭さんのお手製弁当を食べ終えると、満腹効果でまた眠くなってきてしまった。なんとなしに前を見ると陽介さんが何やら手を上にかざして首を傾げている。なんだろうと不思議に思っていたらすっと席を立った。 「そこ、冷房強いし直接風があたってダメだ。圭ちゃん、こっちにおいで……」  そう言いながら圭さんと席をかわる陽介さん。圭さんも「ありがとう」と嬉しそうに席につく。相手を気遣ってサラッと行動する陽介さんに関心しながら見ていたら周さんに頭をグイッと抱き寄せられた。 「陽介さんばっか見てんなよ。眠かったら俺の肩で寝ろ」  強引だけど、周さんは僕が眠くなっちゃったのをわかってくれて肩を貸してくれた。恥ずかしいなと思ったけど、陽介さんも圭さんもうつらうつらしているから、僕も遠慮なく周さんの肩を借り瞼を閉じた。  どのくらい眠っていたのか、顔をあげると圭さんと目が合い「もうじき到着するよ」 と教えてくれた。  目的の駅に到着し、沢山の人が電車を降りる。人混みに押されるようにして僕らも電車を降り、改札を抜け外に出た。少し気温が低いのか顔に当たる風が心地よく、初めての土地の空気に心も弾んだ。  駅から宿泊するホテルまで送迎バスが出ているらしいので僕らはバスの到着を待つ。程なくしてバスが到着し、乗るのは僕らだけみたいだったので順に乗り込んだ。「奥の方からお掛けください」とアナウンスがあり進んでいくと、後から他の乗客も数人乗り込む。三人組の女の人。僕らだけじゃなくてちょっとがっかり。チラッと見られた気がして顔を上げると、派手な雰囲気の三人組は僕らの方を見て何かコソコソ喋っているようだった。その目がニヤニヤしているように見えて、嫌だな……と思ってしまった。  しばらく送迎バスに揺られ、目的のホテルに到着する。そこは木立に囲まれたお洒落な洋館の雰囲気で、プチホテルと言ったところかな? なんだか僕が想像していたのと違っていてすごく素敵なところだった。 空気も綺麗。景色も最高。この辺りをただ散歩するだけでも楽しそうだった。  圭さんがチェックインを済ませている間、僕らはロビーのソファで待っていた。建物の中も華美過ぎないシンプルなインテリアがセンス良く配置されていて、凄く居心地がいい。圭さんは何やらフロントで話こんでる様子だったので、僕は荷物を周さんに見ていてもらいトイレに立った。  フロント横の通路の先のちょっと奥まった所にトイレがある。用を済ませてみんなの所へ戻ろうとすると先程送迎バスで一緒になった女の人とバッタリ出くわしてしまった。バッタリ……というか待ち伏せされてたような、なんか嫌な感じがして少し警戒する。なるべく目を合わさないようにすれ違おうとしたら声をかけられてしまった。 「ねぇ、君たちこれからどうするの? どこか遊びに行くのかな? あ、ねぇ、ちょっと? 聞いてる?」  香水が臭いし、馴れ馴れしいのがとても嫌だ。明らかに僕に話しかけてきているのは分かったけど思わず無視をしてしまった。 「待ってよ、せっかくだからさ、一緒に行動しようよ。 付き合ってあげるよ」  付き合ってあげるって何? 意味がわからなくて通り過ぎようとしたら腕を組まれてしまった。初対面の人に腕を組まれて不快でしかない。馴れ馴れしいし、香水が臭いし、早く周さんのところに戻りたくて僕はその腕を振りほどいた。 「あの、僕達あなた達と一緒にいたくもないし、困るんですけど。それと気持ち悪いので触らないでください。何で上から目線で僕らを誘うんですか? 興味ないのでどいてください。失礼します」 「…………」  僕は丁寧にお断りをして通路を進むと、唖然としている周さんが立っていた。 「チェックイン済んだぞ。竜太遅いから心配して見に来たけど……まあ心配する事はなかったな」  ちゃんと断ることができて偉いぞと褒められた。 「周さん、トイレから戻るのが遅いくらいで心配しすぎです。トイレくらい一人で行けますよ」  そう言って僕が笑うと、周さんは「そこじゃねえから」と笑った。

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