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48 各々の部屋 残された三人は…

 陽介と圭、周と竜太が出て行った部屋に残された三人。康介はお酒も少し入ってるせいか、だいぶ緊張も和らぎ先輩二人にも打ち解けていた。 「ねえねえ、俺チェックインの時から疑問だったんすけど……あの部屋割りは意味あるんですかね?」  このメンバーの中でカップルになってる二組を初めからそれぞれ一緒の部屋にしておけばいいのにと、疑問に思っていたことを聞いてみる。 「ははっ、だよな。でも圭の気持ちも汲んでやってくれ。初っ端から陽介と同じ部屋にするのが恥ずかしいんだろうよ」 「でも結局カップル同士が同じ部屋になるんじゃん……」  いつのまにか部屋から消えている兄と大好きなバンドのボーカルが付き合っていると言う事実も最近知ったばかりのことで、康介にとってはまだちょっと複雑な心境でもあった。 「なぁ、やっぱり周と竜太君て付き合ってるの? その、恋人同士として……」  急に修斗にそう聞かれ、少しドキッとしてしまった。初めは付き合っていないなんて言っていた竜太だったけど、あの事件のすぐ後にやっぱり付き合っているんだと嬉しそうに報告してくれたことを思い出す。親友、幼馴染な関係だけど、ずっと竜太を見ていた康介にとってこのことは凄くめでたい事で嬉しい事。やっと自分から少しだけど手が離れたと、親心のようなものもあったのかもしれない。 「付き合ってますよ。竜嬉しそうに教えてくれましたもん」 「そっかぁ。康介君はそれでいいの?」  修斗はニコッと笑って康介の顔を覗いた。 「それでいいって?」 「だってずっと竜太君と一緒にいたじゃん? 好きじゃなかった? 恋愛対象として……周のお前に対するヤキモチも凄いんだよ、あれ絶対ライバル視してるって思うんだよね」  修斗の言うことに正直康介は驚きを隠せなかった。周りから見たらそんな風に見えるのか?  思わず笑ってしまい慌てて修斗に修正した。 「そんなんじゃないですよ。愛情? なんだろうなぁ、竜は家族みたいなもんかな? 弟みたいな。俺、竜が周さんと出会って劇的に変わっていくの見て、ほんと凄え嬉しいんですよ。人間らしくなって来たって言うのかな。ほっとしているのが本心かも」 「そうなんかぁ。いやてっきり……なあ」 修斗と話しているうちに、ちょっと思うことがあった。康介は心の奥の方に少しだけ引っかかる何かがなんなのか、考えてしまった。 「あ、でも俺の初恋は竜なのかも!」 「マジか?」  突拍子も無いことを言い出す康介に、修斗も靖史も驚き声を上げる。修斗はからかいのつもりで最初に康介に聞いたのだけど、まさか本当に康介が竜太のことをそういった目で見ていたとは思わず、内心「いやいやいや」とツッコミを入れた。 「幼稚園の時、笑顔見てドキドキしてたし……可愛いなって思ってたし。周さんに竜が恋してるって気付いた時も、なんか俺、そんな竜見てときめいたし……」 「え……? お前それって初恋を最近まで引きずってたってことにならないか?」  靖史が 堪らず康介にそう聞くと、キョトンとしてから康介は初めて気がついたようにハッとした。 「マジか! そうなんか? 俺、無自覚で初恋&失恋してたのか! マジか……」  真剣に落ち込み始める康介に、修斗は笑いを堪えることができなかった。 「はは! 康介君て面白い! どんまいどんまい!」  修斗と靖史に笑われながら、康介も修斗に聞いてみた。 「笑ってるけど修斗さんだって周さんと幼馴染なんですよね? 大事な親友、竜に取られちゃった感はないんですか? ジェラシーないの?」 「はあ? ないないない! あんなデカイやつ無理〜! お断り!」  修斗も康介も靖史も、周はないわと爆笑する。  だいぶ楽しくなってきてしまい、康介は更に気になることを二人に聞いてみる。兄がいつから圭と付き合ってたのか。そもそも男同士でどういう風に付き合い始めたのか……流石に本人には聞き辛いけど、多少酒も入っている今なら聞きやすかった。 「俺らが高校入学してからかな? 何年も拗らせてやっとくっ付いたって感じ。同性同士の恋愛なんて大変だよな……男と女だってなかなか上手くいかないのにさ。偏見は無いけどよ、公にしにくいのも現実だよな」 「ああ……その点男子校にいると男同士の恋愛に違和感感じなくなるんすよね」 「おぅ、確かにそれはあるかもな」  修斗と康介は男子校だ。靖史や圭は共学。そういうところは少し違うのかと頷いた。 「けど、やっぱり初めて行ったライブの打ち上げで周さんが竜にキスしてるのを見た時は流石に俺もビビったな」 「は? キス?」  康介の爆弾発言。靖史も修斗も顔色を変える。周は気に入った人物に酷く絡むのは知っていたけどキスまでするなんて初めて知ったと、二人とも驚きを隠せない。 「あいつ竜太君にキスしてたんか?」 「だって打ち上げって、まだあいつら付き合う前なんじゃね? てか、出会ったばかりだろ? 周が気に入った奴にベタベタすんのはいつもの事だけど、キスまでした奴なんていなかったぞ。……ですよね? 靖史さん?」  修斗が靖史に確認すると、うんうんと靖史も頷いた。 「あぁ多分……圭にまとわりついてた時だってキスまではしてなかったと思うし。あ、でもこれ陽介の前では言うなよ? 誤解して絶対また周、ぶっ飛ばされる」  以前圭から聞いた話。周が陽介にぶっ飛ばされたというのは本当だったんだと康介も驚いた。 「周、圭さんと初めてあった時、ギターに凄く惚れ込んでさ、しかも圭さんてかっこいいし可愛いじゃん? すぐにいつもの悪い癖がでてね。で、いい加減堪忍袋の切れた陽介さんにぶっ飛ばされたってわけ。いやぁ俺、周がやられるのなんて初めて見たからびっくりしたよ。本人も相当びっくりしてたけどな。体格差もあんのに、陽介さんも、かなり強えよな」 「周、しばらくおとなしかったもんな」  思い出して笑う二人に、康介は兄の意外な一面を知って面白かった。

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