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53 竜太め……
竜太は一人で楽しそうに露天風呂に入ってる。
俺は竜太に声をかけ、この部屋に残ってる修斗の荷物を持って隣の部屋へ行った。
隣の部屋では修斗と靖史さん、康介がまだ楽しそうに飲んでいた。
「あれ? 周さんどうしたんすか?」
俺の顔を見て康介がヘラヘラと聞いてくる。毎度なぜかこいつの顔を見るとイラつくんだよな。なんとなく康介を無視して俺は修斗に荷物を渡した。
「修斗、悪りいな。荷物持ってきた」
「お! ありがと。俺この部屋にいるし明日も竜太君とご一緒にどうぞ〜」
さっきの事を思い出し、途端に顔が熱くなる。こいつらは俺と竜太が付き合っているのを知っている。でもさっきの事は知る由もない。だから俺が恥ずかしがる事はないんだ。
「周、竜太君はどうした? だいぶ酔ってたみたいだけど大丈夫か?」
靖史さんが心配してくれてる。そうだよ、だいぶ酔ってたよ……大変だったよ。
「あ……なんかご機嫌で部屋の露天風呂に入ってます。大丈夫です」
「ふうん、そっか。下のフロアの温泉も広くてなかなか気持ちが良かったぞ。さっきもまた行ってきちゃった」
靖史さんが大浴場も勧めてくれたけど、なんか俺、疲れちゃったから部屋の露天に入れればいいや。そんな話をしていたら、また部屋のドアが開き陽介さんが入ってきた。
「おーい、荷物取りにきた 」
思わず陽介さんから視線を外す。ちょっとまだ心の準備が……でもちゃんと謝っとかねえと、と思い声を掛けようと顔を上げた。
「お、周、竜太君は?」
そう聞かれただけなのに、ボッと顔が赤くなるのがわかる。
「あ……いや、部屋で風呂入ってます」
「あれ? 周、顔真っ赤。どしたの〜?」
修斗が俺を見てからかうようにそう言った。
「あ、陽介さん……ちょっといいすか?」
俺はみんなから少し離れた所に陽介さんを呼ぶと、竜太がいろいろ質問責めにしたことを詫びた。勿論陽介さんはそんなことで謝るな、と笑って許してくれた。
けど──
「いやぁでも参ったよ! 竜太君、凄いんだもん。こっちが恥ずかしくなっちゃうよね。熱心にあれやこれや聞いてたぞ。途中で勘弁してもらったけどな」
せっかくこっそりと謝ったのに、大きな声で言われてしまった。盛大に恥ずかしい。
「すみませんでした……」
「で、どうだったの? 出来たの?」
ニヤッと笑い、陽介さんは俺に聞く。なんてこと聞いてくるんだよこの人は! これは絶対わざとだ。揶揄われているとわかっても、恥ずかしさが勝って俺は何も言い返せなかった。
「いや、その……出来た……というか俺だけ、というか……って、言わせないでください!」
気がつくと他の三人もニヤつきながら俺を見ている。
くそ! 竜太め!
既に皆んなにバレてるとわかり、居たたまれなくなった俺はそそくさと部屋に戻った。
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