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54 目覚めると……

 周さん喜んでくれたみたいで安心した。初めてだったけど、ちゃんと前もって調べたりしたから大丈夫だった。すごくドキドキしちゃったけどきっと大丈夫……  初めて他の人の体に触れた。僕と全然違って周さん、やっぱりかっこよかった。背が高くて痩せてるのに、脱いだら意外と筋肉がついていて、腹筋も割れてた。あんなの見ちゃったら自分の体がちょっと情けなくて恥ずかしい。  部屋にある露天風呂。僕はのんびり一人で入る。空を見上げると満天の星。すごく綺麗だ。周さんと一緒に入りたかったけど、修斗さんの荷物を隣の部屋に届けるとかで行ってしまった。そうだよね、この部屋は元から周さんと修斗さんが使う部屋。僕がちゃっかり来てしまったから修斗さんは向こうの部屋に行かなきゃならなくなってしまった。あとで謝ろう。  周さんまだかな……やっぱり一人は寂しかった。    さっき飲んでたジュースがまだいっぱい残ってたはずだと思い出し、喉が渇いたので僕は腰にタオルを巻いて部屋に戻った。バスローブがあったのでそれに着替えソファに座り、チビチビ飲んでいたら眠くなってきてしまった。 あれ? ──  気付いたらベッドの中。目が覚めた僕は慌てて背後を振り返ると、周さんが僕を抱えるようにして眠っていてちょっとドキッとしてしまった。ソファで寝てしまった僕をきっと周さんがベッドまで運んでくれたんだと、嬉しくなって僕は周さんの方に体の向きを変えた。周さんはぐっすり寝ていて目を覚まさないから、周さんの頬にチュッと軽くキスをして抱きつきながらまた眠りについた。  暖かい日差しが触れ目が覚めると、目の前にスヤスヤ眠ってる周さんの寝顔。寝顔も綺麗でかっこいい……僕は思わず周さんの頬にキスをした。朝起きても大好きな人が目の前にいるって凄い幸せ。毎日がこうならいいのにな。  せっかく眠っている周さんを起こさないように、僕は肩に乗っかっている周さんの腕をそっと退かし起き上がろうと頭を起こす。 「……んっ!」  動いた途端に襲って来た頭の痛み。ガンガンと何かを打ち付けられているよう。目眩もして気持ちが悪い。 僕は起き上がることができずにベッドに座ったまま蹲った。 「ん、竜太おはよう。 ん? どうした?」 「……あ、たま、ガンガンする」 悶絶する僕を見て周さんが慌てて飛び起き、僕の額に手をやった。風邪かな? でもこんなに頭が痛かったことなんてない。 「どら? 熱はないみたい……あ! まさか二日酔いか?」  周さんが僕の顔を見て驚いたような顔をした。  嘘……二日酔い? お酒なんか飲んでないのに。僕がそう訴えると周さんは笑って昨日飲んだのはお酒だったと教えてくれた。あんなに甘くて飲みやすかったのに、お酒だったの? 僕はなんてバカなんだろう。 「ごめんなさい…… 」  周さんは苦笑いして、謝ることはないからと頭を優しく撫でてくれた。 「缶一本だけなのにな。どんだけ弱いんだよ。とりあえず圭さんに伝えるから休んでろ、な?  その調子じゃ朝飯も無理だろ」  そう言って、携帯をとりだし圭さんに伝えてくれた。  周さんはコップに水を入れてベッドサイドに置いてくれ、僕には「このまま寝てろ」と言い残し、みんなと朝食に行ってしまった。  僕はベッドに潜り考える。今日は康介と行きたいところがあったんだ。とてもじゃないけど今は起き上がれない。でも少し寝ればきっと大丈夫。絶対行くんだ……  しばらくすると、お盆にお粥を持った周さんが帰ってきた。 「なんかな、圭さんがここのオーナーに頭痛で寝込んでるって言ったら用意してくれたみたい。復活したら食えって。あと頭痛薬な」  僕は色んな人に迷惑かけっぱなしだ。後でちゃんと謝らないと……何やってるんだろう本当に。 「ありがとうございます」 「とりあえず、食えたら食っとけ……あ、俺が食べさせてやろうか?」  周さんはそう言うと、お粥を掬ってフウフウと冷ましてくれた。照れ臭かったけど嬉しくて口を開ける。そんな事をしていたら圭さんと陽介さんが部屋に入ってきてあわててお粥を飲み込んだ。 「お、邪魔してごめんね。竜太君、大丈夫? 二日酔いなんだって? あんまり頭痛いようなら薬飲んでね」 「圭さん、ありがとうございます。僕……迷惑かけちゃってごめんなさい」  そんなの気にすんな、と言いながら圭さんは僕の頭を撫でてくれた。 「さあさ、ほら、周! 俺らは練習行くぞ」  さてと……と僕から離れた圭さんが周さんの腕を捕まえる。周さんはそんな圭さんに「いやいや待って」と言ってその場に留まった。 「俺は竜太の看病してるからいいっす」 「いいっす……じゃねえよ! ただの二日酔いだろうが。看病なんていらねえから。全く。今日は午前中スタジオ行くって決めてただろ。竜太君は康介君が見てるからいいの! ほれ、行くぞ!」  康介と聞いた途端、周さんはすごく嫌そうな顔をする。「康介じゃダメだって!」と駄々をこねながら、周さんは圭さん達に連れていかれてしまった。

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