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57 ちょっと寄り道

 康介に付き合ってもらって、目的のお店に向かった。  スタジオと反対方面に行くと飲食店や小洒落た雑貨屋、カフェなどが並ぶ通りがある。そこにある雑貨屋に向かう途中で美味しそうな匂いが鼻を擽り思わず僕は足を止めてしまった。 「あ! 康介見て! あのカフェ、雑誌で見たことある! 人気なんだよ。僕パンケーキ食べたい」  康介のシャツを引っ張り引き止める。 「え? 雑貨屋行くんじゃねえの? ああ……竜は甘いもん好きだったよな」 「まだ時間あるし、ね? 食べてこうよ」  あんまり乗り気じゃない康介を無理やり引っ張りそこのカフェに入った。お天気も良く、木漏れ日が気持ちいい。人通りの割に静かなテラス席に二人で座る。僕は数種類のフルーツが乗ったパンケーキと紅茶。康介はコーヒーを頼み、人の流れを何となく目で追った。 「凄い! 見てよこれ! こんなにフルーツ乗ってる! あっ! 美味しい! ねえねえ康介も食べてみる?」  早速運ばれて来たパンケーキに僕は興奮を隠せない。一番人気なだけあって見た目も凄く豪華でひと口食べればふわふわとクリームとパンケーキが口の中で溶けていくようだった。嬉しくて僕はフォークにパンケーキをひと口分刺し、康介の口元に向けた。 「いや、俺はいいよ。ありがとな」  康介はそんな僕に笑顔でそう言いコーヒーを啜る。なんだよちょっとくらい食べてみればいいのに……なんて思いながら僕は一人でパンケーキを味わった。 「こんにちは。君たち仲がいいんだね」  突然背後から誰かに声をかけられた。驚いて見てみると、そこには僕らと同年代っぽい男の二人組。勿論僕も康介も知らない人だ。 「ちょっとご一緒していいかな?」  そう言って僕らの返事を待たずに椅子に座る。あっという間の出来事で僕も康介もただ唖然として見ているだけ…… 「ねぇ、君達仲良さそうだけど、もしかして付き合ってるの?」 急にそんな質問されて、康介もびっくりして「男同士だし友達だよ」と答えると、二人はニヤッと顔を合わせた。なんとなく嫌な感じ…… 「ふぅん、そうなの?」 「君達二人、タイプだったからつい声かけちゃったんだ。ねえこれからどこいくの? 俺らここら辺地元だしさ、一緒に遊ぼうよ 」  観光客でしょ? 案内するよ、と二人でぐいぐい迫ってくる。もしかしてナンパかな? なんて焦っていると康介がスッと立ち上がった。 「いや、ごめんね。俺らこれから行くとこあるから」  康介がはっきり断ると、案外すんなりと彼らは店から出て行った。 「びっくりした。男の人にナンパされちゃったね。でも二人ともモデルさんみたいにかっこいい人だったね」 「とりあえず、早く食べて行くぞ……」  怖い顔の康介に急かされて、僕は慌ててパンケーキを頬張った。

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