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59 消えた竜太
さっきの二人組。男相手にナンパかよ……
突然のことで驚いた。 竜のやつ「かっこいい人だったね」なんて呑気な事言ってたけど、ちゃんと見てなかったのかよ。あんな風に人の事を舐め回すように見やがって、正直俺はゾッとした。
誘いを断ってすんなり諦めてくれたからよかったものの、関わったらきっとロクでもないって思ったから、俺は早くこの場を離れたかった。
それなのに!
昼はみんなで食おうぜ、なんて兄貴が言っていたから、それまでにはホテルに帰らないとと急いでいたはずなのに……
竜はあっさり買うものを決めて会計もすんなり済ませていたのに、何も買う予定のなかった俺がモタモタとよさげなピアスなんか買おうとして竜を待たせてしまった。「先に出てる」と竜は言い外に出る。でも俺が買い物を済ませて外に出た時には竜の姿は消えていた。
不思議に思い周りを見渡すと、通りの向こうに男に引っ張られてる竜を見つけた。すぐにさっきの二人組だとわかり、背筋が凍る。竜を見失わないように走りながら、俺は慌てて兄貴に電話をかけた。こんな時に限ってなかなか電話は繋がらない。何度か掛け直してるうちにとうとう竜を見失ってしまった。
「なんだ? 康介どうした?」
やっと兄貴と電話が繋がる。俺はどうしたらいいのか半分パニック。
「大変だ! 竜が! 竜が変な奴に連れて行かれた! どうしよう! 見失っちまった!」
俺が慌てて喚き散らすのを、兄貴は「とにかく落ち着け」と何度も俺にそう言った。
「康介! 落ち着け! 今何処だ? 俺も行くからさっさと場所を教えろ!」
兄貴に怒鳴られやっと俺は我に返った。夢中で竜太を追って来たけど土地勘がないからここがどこなのかよくわからない。もう泣きそう……
でもよく見ると見覚えのある通りだった。そうだ、ここスタジオから近いかも! 冷静になった俺はなんとなくの場所と二人組の特徴を教えて電話を切った。
大丈夫……きっとこの辺にいるはず。
俺は当てもなく竜の居場所を探して歩いた。
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