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65 意地悪

 今日も昨夜と同じく、夕食後にみんなでひとつの部屋に集まり賑やかに過ごした。なんであんなに飲めるんだろう、と、僕は横目で見ながらひとりお茶を飲んでいた。 「ほんとにお前、竜太君にべったりだな」  周さんと僕を見て修斗さんが笑う。僕はいつものように周さんの足の間に収まりリラックスしていた。 「竜太君、周に合わせて無理にそんなにくっつかなくていいんだぞ?」  みんな周さんが無理やり僕にこうさせているのだと思っているみたいで、僕は違うと説明する。周さんは体が大きいからちょうどいいんだ。そう、僕の一番落ち着く場所…… 「僕、これ落ち着くから好きなんです。座椅子みたいで……」  そう言ったら少し間があき、みんなが一斉に笑い出す。僕は自分がおかしいことを言ったつもりがなかったから、なんで笑われているのかわからなかった。 「座椅子って!」  言葉のチョイスを間違えたのだと気がついて、慌てて周さんを振り返る。周さんは「俺は座椅子じゃねえよ」と怒った顔をして服の上から僕の胸をギュッと掴んだ。 「あん! やだっ……あっ 」  急に後ろからそんなことされて、驚いて思わず変な声が出てしまう。一斉にみんなが僕の方を見て黙り込んでしまったから、物凄く恥ずかしかった。 「おいおい周……いきなりいちゃつくなよ」 「てか、竜太君、声めっちゃ可愛いんだけど、何? 今の」 「急にやめてください!」  僕は怒って周さんの方へ振り返ると、周さんはニヤニヤして僕を見ていた。この顔は何か企んでいる顔だ。嫌な予感しかしない。それでも「いいから前向け」と言われた僕は警戒しながら言う通りに前を向いた。  周さんは何事もなく僕の首筋に顔を寄せて話をしている。顔が近いな、なんて気付いてしまえばもうそこにしか意識が向かず、どうしてもゾクゾクしてしまい力が抜ける。なんでもない風に話をしてるけど、周さんはわざと僕の耳元に息を吹きかけるようにして話しているんだ。みんなはもう他の話題で盛り上がっていてそんな僕には気がついていないけど、周さんは僕の反応を見て面白がってるんだ。 「修斗さん! あの、昨日のお酒……僕にもください」  堪らず僕は周さんのイタズラから逃れるように、前に身を乗り出し修斗さんに手を差し出す。 「竜太君飲むの? ちょびっとにしとけよ」  修斗さんは心配そうにそう言って僕に缶を渡してくれた。僕はひと口飲んでから、後ろを振り返り周さんをちょっと睨む。 「意地悪しないでください!」 「意地悪なんてしてないし」  そう言いながら周さんの手が僕の太腿に伸びてきた。太腿の内側をスルリと撫でると「竜太」なんて耳元で囁やくからどんどん顔が赤くなってしまった。 「半分以上は飲むなよ。また二日酔いになったら嫌だろ?」  みんなにわからないくらいの小さな声で僕の耳元に囁きながら、周さんの手は相変わらず僕の内腿をスルスルと撫でている。そんな事されたら体が熱くなってきちゃうじゃん。 「あっ……」  ほら。無意識に声が出ちゃう。これ以上はきっと耐えられないと思った僕はグイッと一口飲みながら立ち上がる。 「僕もう部屋で休んでます!」  そそくさと逃げるようにして部屋に戻った。 ※未成年の飲酒表現がありますが、飲酒は成人してからです。未成年の飲酒を推奨しているわけではありませんのでご理解の上お読み下さい。

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