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康介の心配

竜が教室に一人で残り、机に突っ伏して泣いていたあの日以来、竜は俺のことを避けている。 これ以上ないくらい悲しそうに泣いていた。「僕が女ならよかったのか」なんて、どうしてそんな事を言い出したのかわからない。ついこの前まで幸せそうにしていたんじゃなかったのか? 俺はしばらく周さんと会ってないからよくわかんねえけど、なんで竜はこんなになってんだよ。 志音が何か言ったのか? 竜は俺と話さないばかりか、目も合わそうとしない。挙げ句の果てには心配した俺の手を、これでもかってくらい振り払った。 ショックだった── 竜と出会ってから俺は一度だって拒まれた事なんてなかった。何かあればまず俺に相談してくるし、俺のことは唯一大事な友人として見てくれていたはずだったのに。 竜に何かがあったのは明白だったけど、話も出来ないんじゃ俺にはどうしようもない。助けてやりたくても見守ることしかできないのがもどかしい。 ここのところ、竜の近くには必ず志音がついている。志音の取り巻き連中も一緒につるんでるみたいだけど、やっぱり竜の心はどこか別の場所にいるように見える。みんなと一緒にいるのに竜だけ一人孤立しているように見えた。 時折志音が寂しそうに竜を見つめているけど、そんなこと竜は全然気がつかない。 そうだよ……志音は竜の事が好きなんだよな。 あいつだって竜が心配なんだ。 竜がおかしくなったのはやっぱり周さんが関係してるんだろうと思い、俺は修斗さんに相談した。あんなになってる竜はみてらんなかったし、避けられてるんじゃどうしようもない。かといって放っておくこともできないから……修斗さんに頼ってしまった。 お昼に修斗さんに屋上に来てもらい、これまでの竜の様子を話してみた。修斗さんが言うには、周さんは最近殆ど学校に来ていないらしい。おまけにメールなどの返信もなく、しばらく連絡すらとってないと言われてしまった。 あ、でも周さんはそもそも連絡不精なところがあるから、ちゃんと返信がくる方が珍しいって修斗さんは笑ってた。だから返事がないからと言って心配することもないらしい。 それもどうなんだよ…… 人として。返事くらいしろよ。 俺の話を聞いて心配してくれた修斗さんも、竜の様子を見てくれると言ってくれた。心配なのは変わりないけど、でも修斗さんに相談して良かった。 俺は修斗さんにお礼を言って教室に戻った。

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