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真実
修斗さんと圭さんに連れられ、周さんの家に到着した。周さんの家は二階建てのよくあるアパート。カンカンと階段の音を鳴らし、二階へ上がった。
「周、いるかな?」
修斗さんが呟き、呼び鈴を鳴らす。どうしよう……話をしなきゃとここまで来てしまったけど、周さんに何から話したらいいのだろう。緊張して胸が苦しい。
少しすると、中からばたばたと音が聞こえ、「はあい」と言う声の後にガチャリとドアが開いた。
ドア越しに聞こえた声が女の人の声だったので、周さんじゃないのがわかる。
ドアが開き、そこに立っていた人物を見て僕は体が強張った。
……なんで?
「あれ、雅 さんがいるなんて珍しいっすね。お久しぶりです」
修斗さんは笑顔でその人に挨拶をした。横で圭さんも会釈をしている。
待って……何これ? 修斗さんや圭さんの知り合いなの? こんなに親しげで楽しそうなのに、僕だけ心臓が破裂しそうにドキドキしてるし、なんならここで泣いてしまいそう。僕だけ一人で大混乱だった。
だって目の前のこの人は、あの写真の人だったから。
「あらぁ! 修ちゃん、圭君! どうしたの? ……ん? その後ろの子は見たことないわね。初めましてよね?」
「あの……雅さん、周 今日います?」
雅さんと呼ばれるその人は、気怠そうに長い髪をかきあげ、少し不機嫌そうな顔をした。
「周ならいないわよ……もしかしてあいつ、学校行ってない?」
修斗さんも圭さんも、何だか返事に困ってる。
「とりあえずここじゃなんだから、上がってよ。そこの固まってる僕も紹介して」
雅さんに促され、部屋にお邪魔することになった。
雅さんは僕たちに麦茶を出しながら僕を見てハッとした表情を見せる。
「ねえ! もしかしてそこの僕は竜太君かな?」
なんで僕の名前を? 驚いて「はい」と答えると雅さんは突然大声をあげ僕に抱きついて来た。
「やっぱりー! 会いたかったのよ竜太君!」
もう何が何だか、僕にはこの状況に全く頭がついていかない。
困惑している僕を見て、修斗さんが話し出した。
「竜太君、その人は周のお母さん。雅さんだよ」
僕の頭にまたハテナが浮かぶ。
お母さん……周さんのお母さん?え?お母さん?
「え? 若いっ!」
驚きのあまり、思わず声に出してしまい慌てて口を押さえた。そんな僕に雅さんがキョトンとしてから破顔する。
「キャー!竜ちゃん、ありがと! そんなに驚いてくれて嬉しい!」
嬉しそうに再び僕に抱きついてきた。僕はホッとして全身の力が抜けていく。思わずふふっと笑ってしまい、涙が零れてしまった。
「ちょっ、ちょっとどうしたの? 竜ちゃん?」
雅さんは慌てて僕から離れた。ああ僕ったら……酷い勘違い。
「……もしかして竜太君、雅さんの事を? 」
圭さんが恐る恐る僕に聞く。僕は黙って頷いた。
少しの沈黙の後、二人にゲラゲラと笑われてしまった。そして「よかったな!」と肩を叩かれる。僕は泣きながら「はい」と言うのがやっとだった。こんなにホッとして嬉しいことはない。
本当に僕ってば、馬鹿みたいだ……早く周さんに会いたい。会って謝りたい。
雅さんだけ訳がわからず、キョトンしたまま僕らを見ていた。
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