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準備
放課後あちこちで準備が始まり、慌ただしく人が動いてる。
僕ははそんな中、一人部室へと急いだ。
だいぶ仕上がってはいるけど、途中で少し修正したからまだまだ全然、これはちょっと急がないと終わりそうもない。
個人の展示品が仕上がった部員から、文化祭の看板やアーチなどの装飾を手伝うことになっている。僕は到底そちらの方にまで手が回りそうもなかった。
「部長、ごめんなさい。僕なかなか終わらなくて……」
みんなが忙しそうなのに申し訳なく思い、僕は部長に謝った。
「いやいや、気にするなって。一年生はみんなそんなもんだよ。こいつらだって去年は何も手伝えなかったよな?」
部長がそう言って笑うと、二年生の先輩達は苦笑いをした。
「それにしても、渡瀬君のその絵、凄いいい雰囲気だよね。楽しみだよ」
まだ途中なのに褒めてもらえて凄い嬉しい。
頑張ろう……とやる気が湧いた。
黙々と筆をキャンバスに運んでいると、窓からコンコン聞こえてきた。そのコンコンする音が段々と大きくなってるような気がする。僕は筆を走らせながらその音の方へ意識を向けた。
気が散る!
少しイラっとして窓を見ると、そこには笑顔の周さん。
驚いた……
僕は慌てて窓を開けると周さんが無邪気に「竜太いないとつまんない」と言って笑う。
「まだ帰んないの?竜太ご無沙汰だから今日は一緒に帰りたいのに」
可愛らしいことを言う周さんに思わず頬も緩んでくる。
「あ、ごめんなさい。作品急いで仕上げないとだから、まだ帰れないんです。せっかく来てくれたのにすみません……」
一緒に帰りたいのは山々だけど、涙を飲んで周さんの誘いを断る。でも……下校するにはまだ早くない? だってどのクラスもみんな準備を進めているはず。
「周さん、クラスの準備とかないんですか? みんな準備してますよね?」
僕の言葉に視線を泳がす周さん。すぐにサボっていることがわかってしまった。
「周さんだってちゃんと準備手伝わないとダメでしょ! 修斗さんは? 修斗さんもその辺にいるんでしょ? ほら、一緒に準備して来て下さい」
僕が言うと、へいへい……とダルそうに返事をして、周さんは校舎の方へ消えて行った。
「ねぇ、渡瀬君て橘と仲いいの?」
突然先輩に声をかけられ、驚いてしまった。
「あ……はい。仲良くさせてもらってます」
そう言うと、その先輩は不思議そうな顔をする。
「ふぅん、そうなんだ。なんか橘のあんな姿なんて意外だな……」
そう呟き、行ってしまった。
……なんだろう? ま、いいや。僕は早くこの作品を仕上げなくっちゃ。
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