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前夜祭

この高校の文化祭は準備を終えた前日にささやかだけど前夜祭というものがある。主に文化系の部活の展示発表と、体育館でダンス部の発表。生徒会からの挨拶があり、これから始まる文化祭二日間を皆で頑張りましょうと乾杯をする。 ここ数日の準備期間、僕は殆ど周さんと会えなかった。 でも文化祭で周さん達のライブを見て、その後の後夜祭からは一緒にいられる。後夜祭も終わったら、圭さんの家で皆んなで打ち上げをするんだと言っていた。 すごく楽しみ── 僕の絵はギリギリでなんとか仕上がり、皆んなの作品と一緒に展示されている。展示が始まりすぐに周さんと修斗さんが二人で見に来てくれた。 「………… 」 「………… 」 二人とも僕の絵の前で黙ってしまった。どうしたのかな? 何かおかしかったかな……少し不安になったところで修斗さんが僕の方を振り向いた。 「これって、もしかして俺ら?」 恐る恐る聞いてくる修斗さんにちょっと可笑しくなってしまった。そうなんだ。少し抽象的なんだけどここに描かれているのは僕の大切な人達。周さん、修斗さん、康介、陽介さん、圭さん、靖史さん、そして志音…… はっきり人物が分かるようには描いていないけど、これは皆んなの姿だった。 「なんか、よくわからないけど……凄え綺麗な絵だな。光が当たってるみたいな……」 周さんがぽつりとそう言った。 わかってもらえて嬉しかった。僕は自然と顔が綻んでくる。 暫く二人は僕の絵を静かに鑑賞してから、また後で体育館でな! と言って、教室から出て行った。 その後も康介や陽介さんも来てくれ、やっぱり少し黙り込んだ後にこの絵に描かれてるのは自分達だと気が付いて、喜んでくれた。 「竜が人物を描くなんて初めてだよな。ま、これは人物だって言われなきゃわからない雰囲気だけど……」 康介にそう言われて僕は初めて気が付いた。 そうだね。今まで興味がなかったから人物を描こうなんて思ったこともなかった。 改めて僕は思った。 僕は周さん達と出会えてやっと人間らしくなったのかな? 少しオーバーかもしれないけど、そんな気がする。 周さんと出会ってから初めての感情がたくさん湧き上がる。 みんなに感謝しなくちゃ…… こうして展示を終え、僕は皆んなのいる体育館へ向かった。 体育館では大勢の生徒が集まり壇上に上がる生徒会長の話を聞いていた。 明日からは他校の生徒や多数の女子たちが来るので、くれぐれもトラブルのないように……と話している。後夜祭では文化祭の様子を撮影したスライドショーやビンゴ大会を予定しているので、協力して早く後片付けをして、全員参加するように、だって。なんだかとても楽しそう。 一通り説明を終えた生徒会長が乾杯の音頭をとり、配られた飲み物をみんなが頭上に掲げ成功を願い乾杯をする。会長がステージからおりると、今度はダンス部が壇上に上がりパフォーマンスを始めた。 周さん達と一緒にダンス部のステージを見ていると、いつの間にか美術部の先輩、井上先輩が横にいた。何日か前に周さんと仲がいいのか? と聞いてきた先輩。 「橘が前夜祭にまで顔を出してるの珍しいな。去年はライブにしか出なかったのに……」 突然井上先輩が周さんに声をかける。周さんは怪訝な顔をしながら井上先輩の方を見た。 「あ? なんだっていいだろ。今年は俺は楽しむんだよ」 少し不機嫌そうに周さんがそう答えた。井上先輩は「ふうん……」とあまり興味がなさそうに頷き、僕に向かって「あの絵は橘達だったんだな」と言いながら行ってしまった。 「井上先輩って、周さんと同じクラスだったんですね」 僕が聞くと、一年の時から一緒なんだとボソッと答えた。 ダンス部のパフォーマンスが終わる頃、誰かに肩を叩かれる。振り返るとそこには斉藤君が立っていた。 あ! すっかり忘れてた! 「やっと見つけた! 渡瀬君、衣装合わせして! 早くこっち来て」 息を切らしながら慌てる斉藤君に引っ張られ、そのまま僕は教室に連れて行かれた。

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