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ファンですから!

あっという間に熱いライブが終わり周さん達は控え室に戻っていった。 興奮冷めやまず、体育館にはまだ人が溢れてる。 「凄いよかったー! もっといっぱいやればいいのに!」 「今まで圭推しだったけど周もいいよね!」 「周、ギャップ萌え! 周、最高!」 「周、あたしの事見てた!目が合った!」 僕の側にいる女子のグループが興奮気味に話してる。それを聞きながら僕も心の中で会話をする。 うんうん、六曲だけじゃ物足りないよね! 確かにギャップ萌え、わかるわかる! 僕も周さん推しだよ! 周さん、僕の事も見てくれてたよ! 僕は周さんの特別なんだ! そして康介も大興奮で僕に話しかけてくる。 「見た? 超やべえ! かっこよすぎでしょ! 周さん、何あれ! 惚れちゃいそう!」 康介ったらまた鼻の穴膨らませてる。 「かっこよかったよね。僕らも控え室いけるかな?」 一番に周さんたちに感想を言いたい。早く周さんに会いたい。そう思って僕らは控え室に急いで向かった。 入り口付近には既に凄い人集り。女子も男子も集まってる。こんなんじゃ入れそうにない。しばらくの間、どうしようか康介と考えてるとドアが開いた。 キャーと歓声が上がり、圭さんが出てくるのが人集りの隙間から見えた。出てきた圭さんと靖史さんが集まった人達に何かを話してる。すると集まった客は順番に並び始め長い列が出来上がった。 「なんだろうね?」 控え室から周さんと修斗さんも出てきて先頭に立っている。どうやら順番に客の要望に答えて、握手をしたり写真を撮ったりするらしい。 じゃあ僕らも並ぼう!と、僕も康介と一緒に列に並んだ。並びながら遠目で様子を見ていると、周さんは女の子に腕を組まれ写真を撮ったり、何かプレゼント貰ったり、ハグをされたり……ちょっと見てるのが辛くなってくるくらい色々とサービスをしているようだった。人気者だからしょうがないんだけど、やっぱりヤキモチ妬いちゃうよね…… だんだん僕の順番が近付き、圭さんが僕と康介も列に並んでることに気が付いて驚いた顔をした。隣にいる靖史さんを突き、こっちを指差して二人で笑う。やっと順番が来て前へ行くと、圭さんが呆れた風に僕らに言った。 「なんでわざわざ並んでるの? 君らは直接来ればよかったのに。ごめんな、待たせて……」 「だって僕らもファンですから。それに人が多すぎて入れなかったし……」 周さんが僕に気がつき手招きしている。嬉しくなっていそいそと周さんの所へ駆けつけると、グッと手を引かれ抱きつかれてしまった。おまけに頬にキスまでされた。 案の定、周りで悲鳴が上がる。 「何? あの女! 」 「え? 周からキスした? 嘘! マジで?」 「あの女ムカつく!なんなの?」 口々に罵声が聞こえ、悲しくなった。 ……違うよ。僕、女じゃない。 僕は慌てて周さんから離れようとしても、その手を離してくれない。何考えてるの? 「周さん? ちょっと離れて……」 すると側にいたひとりの女子と目が合った。 「あ! あの子、男の子だよ! さっき私似顔絵描いてもらったもん!女じゃないよ」 「え? 嘘?……ほんとだ! 超可愛いから女かと思った! 紛らわしい!」 僕が男だと分かると途端に和やかムードになった。 よかった……けど、殴られそうな雰囲気から和やかムードに変わってホッとしたけど! こういうことは気をつけてほしい! そう思って僕は周さんのことをキッと睨んだ。 「俺かっこよかった?」 全然悪いと思ってなさそうな周さんは、そう言って僕の顔を覗き込む。 全くもう……かっこよかったに決まってるじゃん! しょうがないので「もちろんです!」と僕は答えた。 周さんに「中で待ってろ」と言われ、僕は後ろのドアから控え室に入った。康介はどうしてるかな? と見てみたら、圭さんと靖史さんにハグしてもらっていて、あまりの嬉しそうなその表情に思わず吹き出してしまった。後から聞いたら、康介は周さん以外の皆んなにハグしてもらったらしい。 相当好きなんだね。

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