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竜太からの報告
D-ASCH、やっぱカッコよかったな! またライブやらないかな……あっという間の二日間だった。クラスの出し物も凄え楽しかったしライブも最高! おまけにこの後夜祭が終われば圭さんの家で打ち上げだなんて! こんなに楽しみすぎることはないよな。
竜は圭さん達にも絵を見せるって言うから、俺は先に教室に戻りクラスの片付けを手伝った。この上なく張り切って片付けたさ。さっさと教室も片付け、俺は後夜祭の会場となる体育館へ向かう。途中、竜と一緒に行こうと展示室へ行くも、もうそこには誰もいなかった。
あれ?……先に行ったかな?
体育館につくと、もう既に結構な人数が集まっていた。近くで志音の姿を見つけ、隣に行く。
「よお!」
俺は志音の肩を叩き隣に並んだ。志音は不思議そうに俺の方をチラッと見ただけだった。
「竜太君は?」
「ああ、なんか見当たらねえの。先に来てると思ったんだけどな……来てない?」
志音は黙ってる。どうしたのかと思い志音の顔を覗き込んだ。
「ん? 志音? どした?」
俺と目を合わせようとしないのがどうも気になる。
「なあ、どうしたんだよ、何かあったか?」
「康介君……ごめんね」
え? 何で志音は俺に謝ってる?
「あの、竜太君の事で……俺凄く嫌な態度だったから」
ああ、その事か……もうすっかりそんなこと忘れてた。
「いいよ謝んなくて。だってお前、竜の事好きだったんだろ? 竜だって今はお前の事大事な友達だって言ってんだしさ、気にすんなよ」
志音はずっと気にしてたんだな……俺の言葉に志音は俯いて笑う。
「竜は凄えいい奴だよ。ちょっとおかしいとこあるけど……あ!そうだ! あの絵、志音も見た?」
俺が聞くと、泣きそうな笑顔で志音が顔を上げた。
「うん見た。あれ、俺 ……嬉しすぎて泣きそうになった」
「竜な、人物画あれが初めてなんだよ。かなり抽象的で人物だってわかりにくいけどね」
竜が色んな絵を描いてきたのは知ってるけど、人物を描いたのは俺が知る限り初めての事。珍しいな……って思ったんだ。 俺がそう言うと、志音の澄んだ大きな目から涙が零れた。
── は?
「おい、泣くなって! なんなの? 大丈夫? 志音ってそんな素直なキャラだっけ?」
慌てる俺を見て志音は泣きながら笑ってる。
……なんなんだよ。調子狂う。
そんな所に竜からの着信が入った。全く……竜のやつどこで何やってんだよ。
「もっしもし!竜遅いじゃん。どうし………た?」
電話の向こうで竜が嗚咽を漏らしてる。え? 竜、泣いてる??
「おい! 竜? どうした?」
「……んが、ぅうっ……お…けが、…うぇ…ナイフで……えっ、……血が……病院に……ぇっ、ぐすん…ズッ……だから………てね」
全く何を言っているのかわからないままプツンと携帯が切れてしまった。
「おい? 竜? 今何処だ! どうした! おいっ! 何だよ! 切るなよ!竜?」
はぁーーー?
なんなんだ? 大丈夫なのか? 全く意味がわからなかったぞ!
携帯に向かって叫ぶ俺を不安な顔で志音が覗き込む。どうしていいかわからず、とりあえず体育館を出ようと向きを変えると、目の前に修斗さんが立っていた。
「血相変えてどうした? 康介君」
俺は慌てて今の電話の事を話すと修斗さんは「ああ……」と言ってクスッと笑った。
「竜太君動転しちゃってるから……さっきまで腰抜かしてたもんな。あ、大丈夫だよ。竜太君はなんともない。周がちょっと怪我して今病院行ってるんだよ。きっと圭さんちに先に行ってて、って事が言いたかったんじゃないかな?」
修斗さんが笑いながら話してくれたので、俺はちょっと安心した。それにしても竜のあの電話はちょっと酷い……あんなの誰が聞いてもわかんねえだろ。
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