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打ち上げ

テーブルの上には凄いご馳走が並んでる。よく見ると圭さんはエプロン姿だ。ラフな格好でシンプルな黒いエプロンがカッコいい。意外な姿にちょっとびっくりした。 ……てか圭さんやっぱり可愛い! でも可愛いなんて言っちゃダメなのは暗黙の了解。 「これってみんな圭さんが作ったんですか?」 まるでお店のように綺麗に盛り付けられた料理を見て僕は圭さんに聞いた。 「俺も疲れてるから全部は作ってないよ。買って来たやつもあるけど、唐揚げとスープとそのアクアパッツァは俺のお手製」 ……嘘みたい。この人、文化祭でライブやってそのあと僕の展示見にきてくれて、それから家に帰ったんでしょ? 疲れてるよね? 今そう言ったよね? それなのにこれを準備したんでしょ? 「凄いっ! 」 「このフルーツパンチとスティックサラダとお握りは俺が手伝ったんだよ」 陽介さんがそう言って横からにこにこと顔を出す。 「フルーツ缶開けてドバッと混ぜて、野菜ザクザクって切って飾り付けて、米握っただけじゃんか」 すかさず康介が横槍を入れてきて、二人で揉め始めてしまった。 「ああはいはい……兄弟喧嘩しないでね」 圭さんがイラっとする陽介さんの肩を抱く。 「周と竜太君も到着したことだし、改めて乾杯しよっか。 みんなお疲れ! 」 「乾杯!」と言いながらみんなでグラスを合わせる。ソファにでんと座ったままの周さんが僕に手招きをしたので横に座ると、あーんって僕を見て口を開いた。何か食わせろってことかな? 僕はそう思って確認もせずに唐揚げを周さんの口の中に放ってあげた。周さんは満足そうにもぐもぐ食べてるからきっと正解。美味しそうに食べてる周さん、ちょっと可愛い。 みんなお酒も入り陽気に盛り上がってる中、ふと志音の事を思い出した。そういえば志音は今頃なにをやってるのかな? 同じマンションに住んでるんだし、もし一人で部屋にいるのなら一緒にこっちにくればいい…… 「圭さん、いるかわかんないけど志音も呼んじゃだめですか?」 靖史さんがそれを聞いて、竜太君の絵にもいた子だろ? 会ってみたいな。なんて言うので、ちょっと考えてた圭さんも快諾してくれた。 「竜太君がそうしたいなら呼んであげな。ただし、みんなと一緒に会費は取るぞ」 志音に電話をしてみると案の定部屋に居たみたいだけど、ここに顔を出していいものか躊躇している。 「志音も僕の友達だし、みんなもそう思ってくれてるから大丈夫だよ。気が向いたらでいいから、よかったらおいでね」 部屋番号を伝えて僕は電話を切った。 周さんの所に戻り、康介ともお喋りしながら周さんの口に野菜スティックを運んでいると陽介さんが僕を見て笑っているのに気がついた。 「さっきから見てると、周は何も言ってないのに竜太君自らお世話してんのな。周自分で食えんだろ?横着すんなよ」 それもそうだ……無意識って怖いな。僕は周さんの方を見る。「自分で食べられますか?」と聞いたら、勿論!と笑われてしまった。 「うん、竜太って優しいんだなって思ってた。こんなに愛されて俺は幸せだ」 みんながいる前で恥ずかしげもなく周さんは言う。 「もう! 酔っ払ってるんですか? そういうこと言うのやめてください!」 僕が怒って周さんの方を向くと、グイッと頭を捕まえられキスをされた。 「 ‼︎‼︎‼︎ 」 真っ赤な顔になってしまった僕を見て康介と陽介さんがゲラゲラ笑った。 部屋のチャイムがピンポンと鳴る。志音が来たのかと思い、僕は逃げるようにして玄関に向かった。玄関を開けると、やっぱり志音が遠慮がちに立っている。 「志音、おいで 」 僕は志音の手を掴み、部屋へ招き入れた。きっと志音は圭さんや周さんの手前、気まずく思っているのだろう。でももう大丈夫なんだとわかってもらいたかった。 リビングに入るとみんながこちらを見る。 靖史さんと陽介さんは志音と会った事がなかったので、僕が紹介をした。 陽介さんは志音を見て「ホスト役やってたよね? 学校でも目立ってるから知ってたよ」と笑顔で話しかけてくれた。靖史さんも、周とどっちがデカイんだ? とか、イケメンすぎて眩しい! なんて言って雰囲気を和ませてくれたから、少し戸惑ってた志音もすぐに打ち解け楽しそうに笑っていた。 僕は志音の笑顔に心からホッとした。 しばらくすると志音は周さんの所に来て、深く頭を下げた。 「橘先輩、すみませんでした。俺が勘違いして竜太君に橘先輩に彼女がいるなんて教えてしまって……誤解させてしまったのは俺なんです」 せっかく皆に黙ってたのに、志音は自分からそう言って周さんに謝罪した。でももう大丈夫だよね。 「いいよ、ありゃ誤解されてもしょうがない格好してんだから。それに誤解も解けたし竜太もお前のこと大事な友達だっつってるし。もう気にすんな」 笑顔で周さんは志音にそう言った。それでも周さんが徐に志音の耳元で「でも竜太はお前には渡さねえからな」と怖い声で囁いたのは聞こえなかったふりをしよう……

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