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ビンゴの景品
「そういえば、ビンゴどうだったんだ?」
ふと思い出したのか、近くにいた修斗さんに周さんが聞いた。それを聞いた康介が嬉しそうに「聞いて!聞いて!」と言いながらキッチンからすっ飛んでくる。
「見て見て見て! 俺いっちばん最初にビンゴしたの! すごくね? あの遊園地のフリーパス付きペア宿泊券ゲット!」
高々と封筒を掲げ、嬉しそうに康介がはしゃぐ。
「マジびっくりだったよ。俺も周のもビンゴしたよ。竜太君のもね。景品は適当に選んで持ってきたから……」
修斗さんは自分のバッグから景品らしき紙袋をガサコソと取り出した。
「康介君は、それ誰と行くの?」
志音に聞かれ、騒いでいた康介が急に黙り込む。
「………… 」
きょろきょろと周りを見渡し僕と目が合った。
「竜、俺と一緒に…… 」
僕の方を向きそう言うも、ギロリと周さんに睨まれる。
「ですよね……って!ねぇ、これペア宿泊券ってさ、彼女とか彼氏とかいない奴にとっては困らねえ? 友達と二人っきりでホテル宿泊…って普通に行く? 二人で宿泊出来るような気心知れた奴なんて俺にはいないよ。かと言って兄貴と行ってもなあ……え、待って……なんか寂しくなってきた。やだ俺寂しい……」
康介はチケットを見つめしょんぼりと項垂れた。
「ある意味これは残酷だ……」
靖史さんが笑いを堪えてそう言った。
「で、見て見て! これがビンゴの景品! じゃじゃーん」
今度は修斗さんが可愛くラッピングされた袋を三個、前に差し出す。僕らは適当にそれぞれ受け取ると、周さんがガサガサ開け始めた。
「………… 」
中を確認するなり不機嫌そうにポイっとそれを投げ捨てる。投げた先にいた修斗さんがそれを拾ってプッと吹き出した。
「電子辞書だよ! 凄いね! 周には必要ありそうだけど……いらねえの?」
笑いながら修斗さんも封を開けると「おぉー!」と感嘆の声をあげた。
「これはお役立ちだね。うんうん。ありがたい」
修斗さんの手には、コンドームひと箱と真っ白いフワフワしたうさぎの耳のカチューシャ。笑いながらコンドームを袋に戻し、うさ耳カチューシャを頭につけ、康介の方を見る。
「イケメンは何つけても似合うっ!」
修斗さんを見て、赤い顔して康介が喜んだ。そしてソソっと僕のところに来て「これさ、竜にあげるよ……」と、先程のペア宿泊券を僕に差し出した。
え? いいのかな?
「周さんのせいで、竜 凄い怖い思いしちゃっただろ? これで楽しんでおいでよ」
康介の言葉に周さんがピクッと反応をした。
「俺のせいってどういうこった? あ? 康介」
怖い顔で周さんが怒鳴ると「まずは俺にありがとうは?」と康介も負けじと周さんに詰め寄った。
「……康介ありがとな」
ここは素直に周さんは康介にお礼を言う。お礼を言われた康介は「周さんも楽しんで来て下さいね」とにっこり笑った。
「康介君、いいやつだなぁ」
靖史さんが康介の肩をぽんぽんすると、半べそで康介が靖史さんに抱きついた。
「よしよし…偉いぞ康介君」
康介は靖史さんの腕の中で、くそー!どうせ恋人なんていませんよーだ!って文句を言ってる。
「康介ありがとう。代わりに僕のこれあげるよ」
僕は開きかけの景品の袋を康介に差し出したけど、中身をチラッと見るなり全力で断られてしまった。
「竜太君のは何が入ってたの?」
僕はそう聞かれて袋から出してみた。何だろう?ピンクのフワフワした、手錠かな? それと豹柄のアイマスク。 これはなにに使うんだろう?周さんが興味津々な顔して僕を見てる。
「あーぁ、周得だな……竜太君、気をつけなね」
憐れみの顔をして修斗さんが僕に言った。意味がわからず僕は周さんの方を見る。周さんが得なの?
「竜太……今度二人っきりの時これ使おうな」
嬉しそうに周さんがそれを取ろうとするから、慌ててそれを引っ込めた。
「だめ! これは僕のです。周さんにはあげないですよ!」
用途はよくわからないけど、何となく自分で持っていたかったから僕はそそくさと鞄にしまった。
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