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放課後練習

放課後ジャージに着替え外に出てみると、既に多くの生徒が練習していた。 「……ほんと、凄い光景だよね。中学の時もこんなだった?」 同じ騎馬戦に出る根本くんが僕に聞く。こんな気合入った体育祭なんて僕はした事がない。 「まさか! 高校ってすごいね」 やっぱり異様な光景に見え、若干ひきながら僕らは校庭の隅で騎馬を組んだ。一番軽い僕が騎馬の上に乗ることになったのだけど、どうにもバランスが難しい。難しいのは僕のバランス感覚に問題有り。何度かもだもだやってるうちに、やっぱり僕は転落してしまった。 「イテテ…… ごめんね」 この運動神経の無さにうんざりする。無駄にみんなを心配させてしまう。申し訳なさでいっぱいだった。グラウンドを凄い綺麗なフォームで走り抜ける康介の姿を眺めながら、僕はひとりで保健室に向かった。 「失礼します」 保健室に入ると、怠そうに高坂先生が僕を見る。 「お? 竜太くんじゃん、どうしたの? って、怪我だね。相変わらずだなあ……」 苦笑いしながらここに座ってと椅子を叩いた。 膝を派手に擦りむき、洗浄してもらってると後ろに人の気配がする。振り返るとベッドに志音が座っていた。 「竜太君、何でジャージ着てるの? 部活、運動部じゃないよね?」 志音は学校を休みがちだからきっとこの状況を知らないんだ。僕が志音に説明する前に、高坂先生が話し出した。 「ここの学校の体育祭ね、凄い盛り上がるんだよ。だからみんな一生懸命練習するの。竜太くんもそれで怪我したんでしょ?」 僕は高坂先生の言葉に頷いた。志音はキョトンとして聞いていたけどすぐに驚きの声を上げた。 「えー? たかだか体育祭で? そんな練習なんてすんの? マジ? 放課後に? 面倒くさくね?」 うんうん……志音の言葉に僕も頷く。やっぱりそう思うよね。 「しょうがないよ、これは毎年恒例。あ、今年はどうかな? 僕まだ詳細聞いてないんだよな……」 高坂先生がポツリと呟く。 ……詳細? プログラムの事かな? 「先生、休憩! 疲れた! 休ませて…… 」 そんな話をしてる中、汗だくジャージ姿の周さんが息切れしながら入ってきた。周さんのスーパーレアな姿に高坂先生と志音が言葉を失ってる。 「なんだよ、竜太どうした? うわっ、血! 出てるじゃん!」 周さんが僕に気付き駆け寄ってきてくれた。 「騎馬戦の練習してたら落ちちゃって…… 」 僕が言うなり、途端に周さんは不機嫌な顔になった。 「俺言ったよな? お前らは別に頑張んなくていいんだよ!」 ブスッとしながら僕の頭に手を置き、周さんはチラッと高坂先生を見る。なにもそんな言い方しなくてもいいじゃん……なんだか理不尽な周さんに僕はやる気が失せてしまった。 「橘、今年は体育祭参加すんの?」 高坂先生が「珍しい」と笑いながら周さんに聞いている。 「……たりめーだろ! 俺が出ないでどうすんだよ! くそイラついてるからあんま話しかけんな」 周さん、何をそんなに怒っているんだろう……初めは僕が練習なんかして怪我したからだと思ったけど、どうやらそれだけじゃないみたい。 「おお怖っ!」 と高坂先生が肩をすくめる。そして何か思い付いたような顔をして、手を叩いた。 「あ! もしかして今年の! ああなる程ね。そうか、なら納得」 なぜか僕の顔を見てニヤッと笑った。 「志音くん、ちょっと僕出るから誰か来たら留守だって言っといて」 そう言い残し、いそいそと高坂先生は出て行ってしまった。休憩と言っていた周さんも休む事なく先生の後に続き出て行ってしまい、僕は志音と保健室に残された。 「橘先輩が汗かいてジャージ着て体育祭の練習だなんて……気持ち悪いもの見た」 志音が肩を抱き身震いする仕草をする。学校行事なんて関係ないって言いそうなのに違和感しかないよね、と笑う志音。全くもって同感。 「周さんらしくないよね」 僕はもやもやしながら苦笑いをした。

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