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体育祭
朝から今日は快晴、体育祭日和。グラウンドに全校生徒が整列し、開会式が始まった。
男子校だから勿論男ばっかり……そしてこのただならぬ緊張感。僕が中学まで経験してきた体育祭の雰囲気とはまるで違う。みんな真剣そのもの……特に先輩方々が尋常じゃない。見ていて緊張感が走り、僕は自然と背筋がピンとした。
クラスカラーの団旗が風に揺れるのをぼんやりと眺めながら、全くもって頭に入ってこない校長の長い話を聞いてると、突然目の前の斉藤君がくるっと振り返った。斉藤君は怪訝な顔をして小声で話す。
「ねぇ、僕ずっと気になってたんだけどさ……渡瀬君、何かあった?」
何かって? 何……?
「何もないけど?」
なんのことやら話も読めず、そして思い当たる節が無くもないけどとりあえず首を傾げた。
「だってさ、渡瀬君すっごい見られてるよね……上級生達に。教室にも何人か来てたよね」
心配そうに僕を見る斉藤君。やっぱりその事か、と僕は気持ちが悪くなった。他の人もそう感じてるんだ……視線を感じるのは僕の単なる自意識過剰なのかもと思っていたけど、そうでもないとなるとやっぱり気持ちが悪い。今までずっと「気のせいだ」と思うようにしていたのに……改めて思い返すと嫌な汗が滲んでくる。今だって、なんか視線を感じてる。怖いからあんまりまわりを見られないけど。
「何かあったらすぐ言いなね!」
斉藤君が真面目な顔をして心配してくれるけど「何かあったら」だなんて怖い事言わないでほしい……得体の知れない不安感を抱きながら、僕はまだダラダラと話を続ける校長先生の話に意識を戻した。
校長先生の話も終わり、体育部部長の選手宣誓、準備体操……みんな真面目にやっている。正直このガラの悪そうな男達が揃いも揃って真面目に準備体操をしている様子が違和感ありまくりで居心地が悪い。チラッと視線を遠くに向けると、頭ひとつ飛び出し更に金髪で目立っている周さんが、やはり大真面目に準備体操をしていた。
……なんかシュールだ。
開会式も終わり、僕は自分の応援席に戻る。同じ白組の先輩達が一年の席に来て、「頑張ろうな!」と声をかけてくれた。
この体育祭は、各競技 1位が5点、2位が3点、3位が1点……と得点が入る。そして全部の種目が終わった合計で優勝が決まる。
一番最初の種目、一年生の100m走の集合がかかった。康介が僕の肩をポンと叩き、「行ってくる!」と走って行った。
競技が始まるとそこら中で応援の声が凄い。これだけ盛り上がって応援合戦が始まると、自然と気分が高まり自分も盛り上がってくる。
楽しい!
僕はスタートラインに並んだ康介に向かって、今まで生きてきてこんな大声出した事がないってくらいの大声を出して応援をした。
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