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激突!裸男達の棒倒し

なんで? 嫌だ……なんで……? 周さん怖い顔。 悲しくてしょうがない。 わけもわからず、胸が苦しい。 周さん、怖い顔だったけどどうしようもなく辛そうな顔に見えた。本当にどうしちゃったんだよ……なんであんな事。 「竜太君?」 呼ばれて顔を上げると、修斗さんが目の前に立っていた。 「周に会ったの?」 もう泣き顔を隠すこともできない。思い出したら体が震えてしまう。修斗さんの言葉にうんうんと頷くことしかできなかった。 「竜太君、次出番は? 何に出るんだっけ?」 「……騎馬戦」 修斗さんは僕の肩を抱いてくれ「まだ時間あるから休んでいきな」と救護テントへ連れて行ってくれた。 救護テントには高坂先生と修斗さんしかおらず、僕は机に突っ伏して頭からタオルをかぶり、涙がおさまるのを待った。 「とりあえず、康介君に竜太君がここにいる事を伝えてくるね」 そう言って修斗さんは白組の応援席に行ってしまった。 高坂先生が僕の真横に座る。 「竜太くん大丈夫ー?」 高坂先生の軽い声……僕は無視する。 「あんな余裕がなくなっちゃってる橘、僕初めて見たよ。本当に竜太くんの事が大事なんだね」 「………… 」 大事に思ってるなら、何であんな事するんだよ…… しばらくの間 静かだったけど、突然何かを思い出したように高坂先生がまた僕の方へ来る。 「そうそう、僕は黄組でエントリーしたからね。もし黄組が優勝したら僕を選べばいいよ。僕なら……」 「……?」 「ちょっと先生! 何余計な事言ってんの? ……竜太君? 康介君にここにいるって伝えておいたからね」 戻ってきた修斗さんが僕の頭を撫でた。 エントリー? なんのこと? 遠くで歓声が聞こえた。そういえば今は何組がリードしてるんだろう? 涙はとりあえずおさまった。僕はタオルから顔を出し、グラウンドを見る。 ちょうど棒倒しの集合のアナウンスがかかっていた。 棒倒しは学年混合で色対決。 白組は康介も出る。紅組の周さんも修斗さんも棒倒しに出場する。棒倒しは怪我がないように殴る蹴るなどは禁止で、服を引っ張られて危ないからという理由で上半身裸で争う。それでも荒っぽいから毎年必ず怪我人が出るんだ。 「俺も棒倒し行くから。この後多分このテント混むと思うよ。その前には竜太君は白組に戻ってなね」 そう言って笑った。 「修斗さん、危ないから乱暴にしないでくださいね」 僕が心配すると「乱暴にしないと勝てないじゃん」 と言って笑いながら行ってしまった。 僕は修斗さんから借りたままのタオルを頭にかぶり、白組の応援席へ戻る。 途中で康介とすれ違った。 タオルをかぶってたから僕に気づかなかったのか、振り返り声援を送ると驚いた様子で康介は笑顔で拳を高く上げてくれた。 席に戻ると、同じ騎馬戦に出る根本君が心配そうにこちらに来る。 「どこいってたの? …あ!手、怪我してるみたいだけど大丈夫?」 え? 怪我? 見ると手首から手の甲にかけて擦り剥けていた。 ……さっき周さんに押さえつけられた時のだ。 途端に目頭が熱くなった。 泣かないように、軽く呼吸を整えて僕は「大丈夫」 と答えた。 「なんかさ、渡瀬君 元気ないから大丈夫かなって。もうじき騎馬戦だよ。頑張ろうね」 根本君が笑顔で僕を見る。他の仲間も一緒に、棒倒しの応援を始めた。 気づけば物凄い声援。棒倒しは荒っぽくて凄い盛り上がる。でも見ていてヒヤヒヤする。 上半身裸の男達がそれぞれの棒に群がり、暴力禁止とは言っても見ている限りかなり荒っぽく揉み合っている。 身軽な康介が、紅組の陣地で人の山を登っていた。下から結構殴られてるけど大丈夫かな? 横を見ると、黄組の山に修斗さん。修斗さんは最上で棒を脇に抱え込むようにして倒しにかかっていた。下から殴られてるけど 負けじと蹴りをお見舞いしてる。 周さんも黄色の人集りで誰かをヘッドロックしている……まわりで倒れこみ、呻いてる人が数人。 禁止項目がちゃんとある筈だけど、そんなのおかまいなしな乱暴な空気。 先生達も何も言わない。 康介、怪我してないかな? なんか怖くて見ていられない…… 「……俺、棒倒し出なくてよかった。あんなの絶対無理」 横で根本君が身震いした。

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