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身体の傷と心の傷

大乱闘で終えた棒倒しの結果は、最後まで残っていた白組が一位。次に残っていたのが紅組で二位。そして青組が三位……という結果だった。 無傷、または軽い怪我の出場者はバラバラと応援席に戻っていく。でもやっぱり康介はなかなか戻ってこなかった。 怪我しちゃったかな。みんな大丈夫かな? 僕は心配で救護テントに行きたかったけど、遠目で見てもかなり混み合ってるのがわかるので邪魔しちゃ悪いと思いしばらく待つことにした。 先に戻ってきた軽傷の先輩たちが口々に「ヤバかった」と話す。 「今年はヤバかった! マジ死ぬかと思った……俺ら頑張ったよな! よく最後まで死守したよ」 本当に白組はよく頑張ったと思う。やっぱり棒を守っていた人より攻めていた人の方が怪我人が多いのだろうか? でも思ったより早くに康介が応援席に戻ってきた。 目の上と肘に絆創膏。少し痣も見える。 「康介、大丈夫?」 僕が駆け寄ると、照れ臭そうに笑いながら「問題なし!」 と答えてくれた。そんな康介がふと真面目な顔をして僕を引っ張る。人混みから少し離れ、小声で僕に言った。 「竜、周さんやっぱおかしいぞ……俺さ、周さんにイラついてたからさっき数発殴ってやったんだよ。あ……悪い。ついな…… でも周さん、俺には一切手ぇ出してこなかった。絶対やり返してくるかと思ったのにさ」 ……康介。 「あの人さ、俺のパンチなんて余裕で避けれる筈なんだよ。おまけに二発綺麗に入ったところで、小さな声だったけど俺にごめんなって謝ったんだ……俺が周さん殴ってんのにだよ? 」 康介が僕を見てしょんぼりした。康介、怒りに任せて周さんを殴ってしまった事、気不味く思って反省してるんだ…… 「周さんさ、自分でも悪かったって思ってるんだよ。だから康介に謝ったんじゃないのかな。康介も後で周さんに謝ろうね……みんな怪我、大丈夫そうだった?」 周さんが康介に謝ったと聞いて、少しだけどホッとした。救護テントの方はだいぶ人は減ってるみたいだけど、忙しそうに動きまわっている高坂先生の姿が見えた。 「ちょっと僕、救護テント行ってみる……」 そう康介に告げ僕はテントに向かった。

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