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修斗の心配

今年の棒倒しはメチャクチャだったな。俺まで怪我するなんて最悪……去年は上手くやったのに。 俺は救護テントで、大きく擦りむいた足に自分でパッドを貼る。 ……それにしても 周のやつ、あれはやり過ぎだろ。 竜太君の事でイラついてんのはわかるけどさ、周にやられて気を失ってる奴もいた。あんな暴れ方しちゃ高坂先生に怒られるのも無理はない。 俺は隣で高坂先生に顔の傷を手当てしてもらってる周を見る。あの顔の傷だって康介君に黙って殴られてたやつだ。 あんな風に自分から謝るくらいなら、康介君にあたらなきゃいいのに…… 「なぁ周……さっき竜太君、泣いてたぞ。しばらくここで休ませたけどさ、お前、何した? 大丈夫か?」 周は何も答えず俺を睨んで黙ってる。 「分かってると思うけど、自分が焦ってるからって竜太君にまであたるのは可哀想だろ……」 俺から目を逸らした周は、何かを考えるような顔をして話し出した。 「勿論、竜太が俺以外の奴とデートするとか許せねえんだけどよ、それ以前にあいつがさ……人見知りなあいつが自分の知らない奴を選ばなきゃいけねえなんて事になったら辛いだろ? だから安心させてやりたいから俺は頑張ってんのによ、竜太がラッキーボーイに選ばれてからやたらとあいつに色目使う奴らも増えてるし、竜太は竜太で全然自覚ねえから、いい加減イライラすんだよ」 最後には吐き捨てるように俺に言った。 「でも竜太君は事情を知らないから……」 「俺だってそんなのわかってんだよ!……竜太は何も知らねーんだ。なのに俺はあいつにあたっちまった。抑えらんなくなってる……最悪だな。俺、絶対竜太に嫌われた」 そう言って周はでっかい体を小さく丸めて黙りこんでしまった。 「………… 」 いや、竜太君はお前の事嫌いになってなんかないから安心しろって。 心配そうな顔をしながらこちらに歩いてくる竜太君を見て俺は思った。 俺はしょげている周の頭を撫でてやる。 少し離れたところでニヤニヤした高坂先生が呟いた。 「弱りきってる橘は可愛いなぁ 」 ほんと、この先生は周をからかうのが好きなんだな。 いい性格してる。

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