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康介から見た異様な光景

体育祭── 練習期間から本番の今日まで、本当に周さんが変だった。ジャージ着て練習までして…… もともと俺に対して冷たい人……多分竜のことでヤキモチ妬かれてるだけなんだろうけど、それにしたって俺は「頑張るな」とか「体育祭休め」とか、顔を合わせるたびにそんな理不尽なことを言われてた。挙句本番の今日、お怒りモード全開で怒鳴られちゃ流石の俺だってそりゃ腹も立ちますって。 思わず食ってかかってしまったけど、もう後には引けない。俺だっていい加減腹たってんだよ! 竜も周さんに怒鳴ってた。竜が周さんに怒鳴るなんてちょっと驚いたけど、周さんのふと見せたあの悲しそうな顔にも驚かされた。 それからというもの、周さんもおかしいけど竜も何か考え込んでる風でちょっと様子がおかしい。 なんなんだよ、みんなして。 借り物競争が終わったあたりで、修斗さんがわざわざ俺のところまで来て、竜が救護テントで休んでるって言いに来た。具合が悪いのかと思って心配したら、泣いちゃってるだけだから落ち着くまで様子見てるって修斗さんが言う。 泣いてるって…… 何だよ! なんで竜が泣いてんだよ! わけがわからないけど、竜が泣いてるのとか様子がおかしいのは絶対周さんのせいなんだ。俺はイライラにかこつけて、棒倒しで周さんにあたってしまった。 周さんがスゲー強いの、俺は知ってる。てっきり憤慨して殴り返して来るもんだとばかり思ってたのに、周さんは何故か黙って俺に殴られるままだった。 おまけに「ごめん」って。は? 何なんだよ? 殴った俺が悪いのに……胸が痛かった。 やっぱりおかしい。俺は少ない脳みそをフル活用して考えてみた。その結果、先輩達が何やら賭け事をしてるからみんな真剣なんだ!っていう結論に達した。周さんも賞金欲しさにマジになってる……のかな? でもそういうことなら話はわかる。一等総ナメしそうな運動神経抜群な俺様を警戒してあんな事を言ったんだって、一人納得をした。 うんうん、なるほどな! どんだけ負けず嫌いなんだよ周さん。ウケる。 俺の推理、間違ってないよな? あれ? でも、じゃぁなんで竜が元気ないんだ? 竜が泣いてたのはなんでだ?? とりあえず、まだ疑問が残ったので、竜に俺の推理を言ってみた。 なるほどね、と竜は頷いてくれたけど、俺の話を聞いた途端、みるみる竜の顔色が悪くなった。ギョッとして何か言おうとしたけど、竜は騎馬戦に出るために行ってしまった。 大丈夫かよ……? 騎馬戦が始まると、あまりの荒々しさに息を飲む。騎馬戦ってこんなに荒っぽかったっけ? これじゃ棒倒しと大して変わんねえんじゃね? と俺は焦って竜の姿を探した。 竜は無事か? 竜を見ると他の奴らに追われていたけど乱暴にはされてないようで安心する。一回戦が終わり、スタート地点に戻る竜を見ると明らかにぼんやりしていた。 おいおい、どうしたんだ? 二回戦始が始まってんのに、心ここに在らずな顔をしている竜。二回戦が終わっても、まだボーっとしていた……てか、顔色悪っ!具合悪いのかよ? 騎馬は竜の様子に気がつかないのか、三回戦目の始まりの合図で走り出してしまった。 え? え? 待てって! 竜がおかしいぞ! 何やってんだよ、気付けよ! 具合の悪そうな竜を乗せたまま走り出したもんだから、案の定バランスを崩した竜が頭から落っこちた。 バカっ! 俺は竜に駆けつけようと応援席から立ち上がる。でも目の前の異様な光景に思わず足が止まってしまった。 それぞれの応援席から二年と三年の何人かがザワザワと立ち上がり、倒れてる竜に駆け寄っていく。 結構な人数……俺だってみんな知らねえ奴なんだから、あの先輩らは竜の知り合いだとは到底思えない。そして何か大声で怒鳴り散らしながら周さんが飛び出していき、颯爽と竜を抱えて運んでいった。 救護テントには救護係の修斗さんも高坂先生もいるから大丈夫かな? と、俺はそのまま応援席にとどまった。 俺が考え込んでると、隣の斉藤と目が合う。 「今の見た? 渡瀬君助けようと先輩達がすごい立ち上がったけど…… なんなんだろうね。凄く気持ち悪いよね」 俺も斉藤も多分考えてる事は同じだと思う。竜は、あれだけの奴らに好意をもたれてんのか? …………? 体育祭の勝敗に関係する賭け事の存在と、今の竜に対する先輩達の反応。 そしてこれまでの周さんの荒れっぷり…… 何かがボヤんと頭の中で繋がって、俺はゾッとした。 いやいや……竜は関係ない、よな?

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