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賭けの正体

僕は今まで感じていた不安と疑惑を修斗さんに全部話した。周さんは1500m走に出るため、少し前に行ってしまったので今はいない。高坂先生もグラウンドの救護テントへ戻っている。 ここには修斗さんと僕の二人きり…… 周さんの僕に対しての冷たい態度も相変わらずだったので心が折れそうだった。大して話せないまま周さんは行ってしまい、やっぱり悲しさで胸が押しつぶされそうになる。それでも修斗さんが優しく聞いてくれてるうちにだいぶ気持ちは落ち着いてきた。 「竜太君はあと何に出場するの?」 修斗さんに聞かれたから、もう僕の出番はないと伝えると、修斗さんは話し始めた。 「俺ら二年と三年はね、体育祭の勝敗を賭けてるんだよ。だからみんな真剣なんだ……」 やっぱりそうだったんだ。思った通り…… 「優勝した組の中から選ばれたひとりが、その景品をゲット出来るんだよ」 選ばれたひとり? 「選ぶ……」 「そう、それを選ぶのは竜太君なんだよ」 あ、さっき知らない先輩が言ってたのがこの事なんだ。 「竜太君はね、自分で選んだそのひとりとデートしなくちゃならない」 「…………へ?」 はぁ? 「なんで? 嫌だよ!」 僕は思わず大きな声を上げ、ベッドから体を起こす。 「そうだよね、嫌だよね。でも、賭けに参加してる奴らは金を出してる。その金がデート資金になるんだけど、なにもデートしなくちゃいけないわけじゃない。竜太君が選んだひとりと金を分けるだけでもいいんだ」 修斗さんは詳しく説明してくれるけど……何なの? このめちゃくちゃな賭け。そもそも僕の気持ちは? 僕はこんな事知らなかった! ……てか、なんで僕? 情報が頭の中でひっちゃかめっちゃか。「なんで?」としか言いようがない。 「でも、紅組が優勝出来れば竜太君は周を選ぶ事が出来るだろ? そうなれば安心だ。万が一のために青組と白組は陽介さんに頼んであるから大丈夫……」 「………… 」 だから周さんはあんなに勝つことに拘ってたんだ。白組を優勝させないように、運動神経抜群な康介にあんな事言っちゃったんだ。僕のためにあんな汗かいて練習してくれてたんだ…… 全部僕のため……僕のせいだったんだ。 「周が心配してたよ? 心配しすぎてあいつおかしくなっちゃってるけど……色んな奴らが竜太君を見てるから、周イラついてしょうがないんだって。必死なんだよ……あんなだけど内心凄い落ち込んでるからさ、竜太君、周の事許してやって」 許すも何も……僕は周さんに避けられてるって思ってて。周さんが怒ってるって思ってて。 不安だったんだ。 悲しかったんだ。 僕は怒ってなんかいない。 「竜太君? 大丈夫?」 修斗さんは僕の顔にタオルを押し付けてくる。 あ、また泣いちゃったんだ……情けない。 「ごめんなさい。泣いてばっかで……でも僕怒ってません。わからなくて不安だったんです」 大好きな人に理由もわからず冷たくされる。それが凄い不安だっただけ。 「教えてくれてありがとうございます。やっとすっきりしました!」 理由がわかった今、僕は周さんにちゃんと話さなきゃいけない。ちゃんと会って謝りたい。

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