131 / 432

応援

僕は修斗さんから話が聞けてやっと頭がすっきりした。そういう事だったんだ……なら周さんの今までの言動に納得いく。 よかった。 嫌われたんじゃなかった。 回復した僕は修斗さんと保健室を出た。 「竜太君、大丈夫? ふらふらしない?」 修斗さんが心配してくれる。僕は周りの人に気を使われたり心配されてばかりだ。 「全然大丈夫です。心配かけちゃって本当にごめんなさい」 最近僕は謝ってばっかだと修斗さんは言う。「こういう時はありがとうって言っとけばいいんだよ」と笑ってくれたから、僕は少し気持ちが楽になった。 外に出ると、大歓声が聞こえてくる。 ちょうど1500m走。周さんの出番は終わっちゃったかな……と僕は周りを見渡して周さんの姿を探した。一年生は終わっているようだったので、今走っているのは二年生かもしれない。「ラスト一周!」と言うのが聞こえたので僕はもっと良く見える場所まで急いで走った。 周さん……周さん……! いた! 周さんは二位の位置を走っていた。見たことのない苦しそうな表情に僕まで苦しくなってくる。堪らず僕は走り寄り、周さんに聞こえるようにめいいっぱい声を張り上げ叫んでいた。 「周さん!頑張れーーーーー! ラストスパート! 頑張れ! 頑張れ!」 チラッと周さんと目が合ったような気がした。僕の声、届いたかな…… 周さんはグングンとスピードを上げて、一位の選手との差を詰めていく。嘘みたいだ…… あちこちから歓声が沸く。僕は夢中で周さんに声援を送り続けた。 「凄いや……」 大歓声の中、一位でゴールしたのは周さんだった。見事な逆転! 僕は周さんがゴールしたのを見届け白組の応援席へ戻った。 白組の応援席に着くと、康介や騎馬戦で一緒だった仲間が心配そうに寄ってきた。 「渡瀬君ごめんね! 具合悪そうだったのに俺ら全然気がつかなくて…… 大丈夫??」 僕はあの時、具合が悪そうに見えたのか。 「大丈夫。ぼんやりしちゃってたんだ……気を抜いて勝手に落っこちたのは僕なんだから気にしないで。心配してくれてありがとうね」 本当にそうだ。騎馬戦の真っ最中だっていうのに、僕は周りなんて全く見えず考え事をしてたんだから自業自得。みんなに心配をかけてしまって本当に申し訳ない。 「………… 」 康介が何か言いたそうにこちらを見てる。「もう大丈夫だから」僕は康介にはそれだけ伝え、席に着いた。 「周さん、一位だったね。竜、周さんの応援できた?」 「うん、ちょうど走ってるところを見られたから応援したよ。結構差があったのに追い抜いて凄かったね!」 あの位置から逆転なんてできないと思っていたからびっくりした。僕の声、ちゃんと周さんに届いてればいいな…… 「さて! そろそろ行くかな! 応援よろしく!」 康介が立ち上がり、軽く屈伸運動をする。次は200mリレーだ。 「康介、頑張ってね!」 おう!と拳を合わせ、笑顔で康介は集合場所まで走って行った。今の総合得点はどうなっているんだろう……賭けの存在を知ってしまったからにはどうしても紅組に勝ってもらいたかった。康介には「頑張って」なんて言ったけど、本心はそうじゃない……心の中で「応援できなくてごめんね」と謝ったけど、きっと康介も他のリレーの選手も早いから勝ってしまうんだろうと思うと辛かった。 後半になると、体育祭を盛り上げるため得点ボードに幕がかかり、途中経過がわからなくなる。さっきまでは青組がリードしてるって、周りが騒いでいたようだけど…… ドキドキしてしょうがない。 僕は始まったリレーを見ながら、相変わらず惚れ惚れする綺麗なフォームで走る康介に、複雑な思いで声援を送った。

ともだちにシェアしよう!