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最終種目のその前に…

思った通り、結果は白組が一位だった。紅組は二位…… この勝負も僅差だったから凄く盛り上がった。 「やっぱり俺様早え! 練習した甲斐があったな!」 戻ってきた康介が他のリレーの選手達と嬉しそうに喋っている。康介以外は陸上部。数回の練習でバトンパスも息がぴったりだったらしく、しきりに陸上部への勧誘をしている始末だ。幼馴染で大好きな康介が運動神経が抜群なのは誇らしくて羨ましいことだけど、今日に限ってはとても疎ましく思ってしまった。周さんじゃないけど「休めばよかったのに……」なんて思ってしまう。素直に喜べない自分が凄く嫌だった。 周さんは今までどんな気持ちでいたんだろう…… 「竜……元気ないけど、何かあったならちゃんと言えよ」 康介は相変わらず僕を心配してくれる。 「最後は色別リレーだね! 康介、出番が立て続けで大丈夫?」 康介の言葉を誤魔化し、僕は話題を変えた。康介に本当のことを言ったところで困らせてしまうだけだから。せっかく一生懸命頑張っているのに、こんな事言えるはずがなかった。 いよいよ最終種目、色別リレー。学年混合でリレーをする。これには修斗さんも出場するし、おまけに康介と同じくアンカーらしい。 「おう! 大丈夫! 任せとけ! 紅組のアンカーも修斗さんらしいし、負けらんねえよな!」 何気なく紅組の応援席へ目をやると、周さんの姿が見えた。周さんは一人立ち上がり、校舎裏の方へ歩いて行ってしまった。 きっと旧部室だ…… リレーまでまだ時間があるし今なら話が出来るかもと、僕も周さんの後を追い旧部室へ向かった。グラウンドを離れ、校舎の裏に回ると何人かの先輩が休んでいる。さっき来た時は誰もいなかったのに…… 「あれ? 一年の渡瀬君じゃね?」 一人の人に指を刺される。凄く嫌な感じ…… 「どこ行くの? 君もサボり? こっちおいでよ」 他の人も楽しそうに声をかけてくる。けど僕はちっとも楽しくない。それどころじゃないんだ。周さんと話がしたいんだ。 「僕、向こうに用があるから……」 先輩達の横を通り過ぎようとしたら、腕を掴まれてしまった。 「なんだよつれないなぁ。俺ね、二年の竹田ね。覚えておいてね。黄組だからね」 「おいずりいぞ! まだ勝敗わかんねえだろ。俺は金子、覚えてね」 あぁ……この人達もなんだ。 「すみませんっ、離してください!」 腕を振り払おうとすると、目の前に人影が立ちはだかった。 「すんません先輩! 俺ら急いでるんで!」 ガッとその先輩の腕を払い、僕の肩を抱き寄せ助けてくれたのは康介だった。 「康介? あ、ありがとう……」 「竜、何やってんだよ!なに? あの先輩達。絡まれてたの?」 先輩達から離れて歩きながら、そう言う康介がイラついてるのがわかる。でも僕のことよりリレーの集合時間は大丈夫なのかな。 「周さんの姿が見えたから話がしたくて……ねえ、康介こんなところにいてリレーの集合時間は大丈夫?」 あ! と小さく呟いた康介が僕の手を取り行くぞ! と言って走り出す。 違う……待って。 「ごめん康介! 僕、周さんに会ってくるから。ちゃんと応援には行くから先に行ってて」 康介は「そうか」と呟き走って行った。「頑張って!」と叫ぶと康介は走りながら拳を上げて答えてくれた。後でちゃんと応援しよう。 勝っても負けてもこの種目でもう終わりなんだから……

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