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保健室に避難

今日も康介と一緒に登校をする。学校に到着する前から僕は人の視線が気になってしょうがなかった。別に僕の事を見てるわけじゃないのかもしれないけど、前日のことを思ったらどうしようもなく自意識過剰になってしまった。 まわりの人達が怖い…… まだ一日しか経っていない。それなのに既に僕は物凄い精神的ダメージを負っている。本気で学校を休んでしまおうかとも思ってしまう。でも僕はズル休みをする事も出来ず、結局怯えながら学校に行くんだ。 下駄箱を開けると、やっぱり今日も手紙が入ってる。昨日持ち帰った分も中身は見ていない。今日のこの手紙も僕は見ないで自分の鞄の中にしまった。 康介が隣で溜息を吐く。 「これさ、ラブレターだろ? ここは男子校……全部野郎からの手紙なんだよな。女子からならちょっとは嬉しいって思えそうなのにさ。なんか萎えるよな」 康介の言うこともわかるけど、僕にとってみたら知らない人からの手紙なんてどれも嫌だと思ってしまう。 僕のことを見て顔色が悪いと康介が心配してる。 「今日はさ、僕は保健室にいるよ。教室にいたくない……」 康介もその方がいいと言ってくれた。僕は一旦教室に入り、荷物を置いて保健室へ向かった。 今日の保健室には誰もいない。保健医の高坂先生だけだった。 「あれ? どうしたの? 今日はどこ怪我したのかな?」 そう、僕はしょっ中怪我をして保健室にお世話になっている。だから先生も僕がどこを怪我したのかすぐに聞いてくるんだ。 「ちょっと休ませてもらおうかと思って来ました」 怪我以外で来たことがないから、高坂先生は不思議そうに僕を見た。しばらく考えてる様子だったけど、すぐに「そうか」と頷いた。 「僕は黄組でエントリーしたんだよ。残念だったなぁ。青組にしとけばよかった」 先生の言い分に僕が唖然としていると「ほらそっちで休んでな」とベッドを指差す。 「みんなからのアピールから逃げてきたんでしょ? ベッド使ってていいから休んでな」 そう言われて僕は奥のベッドに腰掛けた。周さんの家に泊まってから正直寝不足で、どんどん睡魔が襲ってくる。小さく欠伸をしたのを高坂先生に見られ、クスッと笑われてしまった。 「眠かったらそこで寝てていいよ。みんな当たり前にここでサボってくけど……竜太くんはマジメだから気が引けちゃうんでしょ? 今日は気にしなくていいから」 「だって具合悪いわけじゃないのに……」 高坂先生は「そんな眠そうな顔してるのに!」と言って笑った。近づいてきた高坂先生に肩を優しく押され、難なくベッドに横にさせられてしまう。僕を押し倒す先生の距離が近くて、ちょっとドキッとしてしまった。僕は慌てて布団に潜り込むと、高坂先生が顔を近づけてきて小さな声で僕に言った。 「竜太くん、君……最近いやらしい顔になってるから気をつけなよ」 「え……?」 「橘と付き合い始めてから色っぽくなったって言ってるの」 そう言うと、僕の髪を撫でてカーテンを閉め出て行ってしまった。 ……高坂先生 今凄くいやらしい顔してた。 僕もあんな顔してるっていうのか?……まさかね。 ドキドキしながらも、再度睡魔に襲われた僕は眠りに落ちていった── あれ? ……んんっ、ん? 保健室のベッドで寝ていたはずなんだけど、なにやら下半身がスースーして寒く感じる。 「え?……ちょっと? なに? 」

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