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自衛
僕は陽介さんについて来てもらい帰宅した。
「ただいま……」
玄関を見ると知らない靴があり不思議に思いながら母さんに声をかけた。こんな時間にお客さんかな?なんて思ったけど、あまり気にせずリビングに入る。
「あ!竜太お帰り。お友達来てるわよ。ごめんね、ちょっと買い物し忘れたのがあって、少し出るわね」
母さんはそう言うと、慌ただしくエプロンを外し、バタバタと出かけて行ってしまった。
……お友達?
康介や周さんなら、母さん名前を言うと思んだけど……誰だろう?
とりあえず、僕は階段を上がり自室のドアを開けた。
「………… 」
目の前にいる人…… 知らない人。
心臓のあたりがキュッとする。
怖い──
その人は僕に気がつくと優しい笑顔で「竜太君、おかえり」と言った。
優しい笑顔……でも目が笑っていない。
「あ、あの……どちら様」
「え? やだなあ竜太君。僕からの手紙、読んでないの? 読んだよね?」
勇気を出して聞いたのに、その人は目を丸くして驚いた顔をしそんなことを言う。手紙なんて一通だって読んでない。
「手紙に書いた通り、遊びに来たよ……竜太君、僕嬉しいよ」
目の前まで近づいてきたその人に腕を掴まれ引っ張られる。僕は恐怖で立ち尽くしていたから、突然の事に驚きバランスを崩してその人の上に倒れこんでしまった。
「否定しなかったってことは、そういうことでいいんだよね?」
下から抱きつかれて、首筋にキスをされる。
え? 何? なんで!
「ちょうどお母さんも出かけてったし……しよっか?」
耳元で囁かれ、気持ち悪くて鳥肌が立った。
「ひっ……や、やだ……離して! 離してください!」
その人は凄い力で僕の首にしがみついていて離れてくれない。苦しい。重い…… 何でこんなことばっかり!
「竜太君……ふふ……いい匂い」
首筋から耳に舌が這い回る。……なんなんだよ。こんな人知らないよ!手紙だって読んでないし!
やだやだやだ!
僕を好きにしていいのは周さんだけなんだ。
何勝手に人の体弄ってんだよ!
カチャカチャと音がして、その人を見ると首にしがみついていた腕を外し僕のズボンのベルトに手をかけているのがわかった。
その瞬間、込み上げて来たのは恐怖ではなく怒りだった。抱きつかれていた腕が外れ動けるようになった僕は、そのまま上からそいつの股間を膝で蹴り上げる。
声も出せずに悶絶するそいつに「今すぐ出て行け!」と怒鳴りつけ、体を起こした。
「僕はあなたなんか知らないし、手紙も読んでない! 勝手に僕の体に触るな!」
そう言ってめいいっぱい怒鳴りながらその人を追い出した。
部屋に一人になる。途端に体中に震えが走りだす。
怖かった……
怖かったけど、よかった。
僕は自分で自分を抱きしめた。
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