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上書きリセット
突然修斗さんが僕を指差し体を乗りだしてきた。
「これこれ! ちゃんと隠さなきゃダメじゃん。周にマークも付けられちゃってどんだけ今日は惚気ちゃうの? 全く竜太君ったらエッチ」
あ……
あっ! と思った瞬間、周さんに頭を両手で押さえられてしまった。強引に僕の顔を周さんの方に向け、マジマジと見られてしまう。
「あ……あの、ここです」
隠せないと思った僕は周さんに見えるよう髪を退かしキスマークを見せた。
「は? なんだよ! これ! 俺じゃねーよ!」
キスマークを見た周さんが大きな声で怒鳴った。
ごめんなさい……
嫌だよね、周さん。
「昨日の人に知らない間に付けられちゃったみたいで…… ごめんなさい」
そう言った途端に周さんが僕の首筋に顔を埋めた。
え?
突然の事にドキッとして体が固まる。チッと小さな痛みが首に走ったかと思ったら、そのまま周さんが僕の首筋にチュッチュッ……と何度もキスを落とした。
「あ、周さん?……あん、やだ……ん、や……」
周さんが耳元でチュッチュッとするから、気持ちよくなってしまう。思わず変な声が出てしまい、僕はゾクゾクして周さんの体にギュッとしがみついてしまった。周さんの吐息が耳にかかり、抱きすくめられている体温にドキドキとしてしまう。
「……ひゃっ 」
ぺろっと耳を舐められ、驚いて顔をあげると修斗さんと目が合った。
……!?
そうだよ、ここ学校! 屋上! 周さんっ? 周さんのペースに僕もつい気持ちが良くなってしまっていたけど、ここは学校! 公共の場なのに、僕ったらこんなになっちゃって……
「や……やめて、周さん……あん」
僕を見て笑っている修斗さんとは対照的に、康介は真っ赤な顔をして口をポカンと開けて固まってる。
……恥ずかしい。
「ムカつくマーク上書きしてやった! 誰だかわかればぶっ飛ばす!」
周さんはそう言って怒りながらも、僕から離れてくれない。がっちり僕のことを抱きしめたまま相変わらず僕の首や鎖骨あたりにキスをしまくっている。
「やだ……んっ、周さん……もぅ、やめて 」
気持ちよくて勝手に声が漏れてしまうし、力だって入らないから周さんの体を突っぱねることもできない。
「あ……ん、や……だ」
「周! そのくらいにしてやれよ。竜太君ゆでダコみたいになってるよ ……あと康介君も真っ赤っか」
修斗さんはゲラゲラ笑いながら、僕と周さんをポカンと見ている康介に目をやった。
「………… 」
恥ずかしすぎる。
「これでオッケ!ほらっ見ろ!」
そう言って周さんは僕のシャツの首元をガッと広げて修斗さんに見せる。最初についていたマークの上に更に大きくキスマーク。そして鎖骨やその辺りにも沢山のキスマーク。
「これで上書き完了!」
満足そうな周さんに言葉が出ない。
信じられない!
みんなが見てる前なのに! それなのに感じてしまってる僕も僕だ……
恥ずかしさで泣きたくなるし、周さんに怒りが湧いてくる。
酷いよ……
「あれ? 竜太 欲情しちゃった?」
「……!?」
そんな僕のことなんか御構い無しに、悪戯っぽく周さんが僕の耳元で囁いた。
「だから!……もうっ! 知りませんっ!」
周さんの意地悪! ほんとやだ!
「僕、午後は保健室で過ごします! 放っておいてください!」
僕はどうしようもなくなって、急いで保健室へ逃げ込んだ。
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