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いい夫婦

今日は圭さんの家に泊まらせてもらうことになった。 学校が終わり、僕は今日も陽介さんと一緒に下校する。 「昨日のこと、周に言った? て、あれ? キスマークでかくなってない?」 陽介さんに言われて昼間のことを思い出してしまい顔が熱くなる。陽介さんは僕が昼に周さんと一緒だったのも知らないから、説明するのがちょっと恥ずかしかった。 「あ…‥あの、周さんが上からまたキスマーク…… 怒った周さんが上書きだって言って……いっぱいまた付けられちゃって」 僕はもう恥ずかしくてしどろもどろ。陽介さんは驚いた顔をして、「学校でか?」と僕に聞く。 ……やっぱり恥ずかしい。 僕が小さく頷くと「周もめちゃくちゃだな!」と呆れ顔で陽介さんは笑った。 一旦自宅に寄り、支度をしてからすぐに圭さんの家に向かう。飲み物やお菓子なんかを少し買ってから、圭さんの家に到着した。陽介さんは鞄から鍵を取り出し、チャイムも鳴らさず部屋に入る。 合鍵…… なんかいいな。ちょっと羨ましくなった。 「合鍵っていいですね」 僕がそう言うと、陽介さんは嬉しそうに「いいだろー」と言う。 「付き合って結構すぐに合鍵くれたんだよな。俺もびっくりしちゃった。けど、これ貰った時すげえ嬉しかったな……」 陽介さんと圭さんって、ほんと信頼し合っていて、お互い大好き! という感じが伝わってきて凄くいい。落ち着いてるし、喧嘩なんかもしなさそうだ。僕から見たらこの二人は理想のカップル。 「圭ちゃん、今買い物してるって。今日は晩飯何だろね」 携帯を眺めながら陽介さんは楽しそう。理想のカップル、と言ったけど前言撤回。これもう夫婦みたいだよね。理想の夫婦。 すぐに圭さんが帰宅した。陽介さんは「おかえり!」と嬉しそうに玄関に走っていき、圭さんから買い物の荷物を受け取りキッチンへ行く。僕は「お世話になります」と挨拶をして、何か手伝えることはないかとキッチンへ向かう圭さんに聞いた。 「うん、ありがと。ちょっと陽介聞いた? 竜太君、手伝えることないかって。偉いねえ。陽介なんか手伝う気なんてちっともないよな」 圭さんが陽介さんを見て笑ってる。陽介さんはリビングのソファーに半分横になり、だらしない格好で「そんな事ねえし」と憤慨している。 「料理は無理だけど、掃除や洗濯はたまに手伝うじゃん。何にもしないなんてそんなわけねえって……」 陽介さんが口を尖らす。圭さんは陽介さんの方に歩いて行きながら、「そうだったな、いつもありがとね」と言って二人でいい感じに見つめ合う。感謝してるよ……と圭さんは陽介さんの前に腰をおろして陽介さんに顔を近づけると、ハッとして僕の方を振り返った。慌てて陽介さんから離れてキッチンの方へ戻って行く圭さん、顔が真っ赤…… キスしてもらいそびれた陽介さんは僕の顔を見てプッと吹き出して笑った。 いやいや、もしかして僕の存在一瞬忘れてたの? 嘘でしょ? 面白い。 「あ、今日は後から周と靖史も来るから、みんなで鍋だよ」 少し慌てた様に圭さんがそう言って、僕に野菜を切る手伝いを頼んできた。そんな圭さんを陽介さんがにこにこしながら見つめてるのが、微笑ましくていいなって思う。僕は上手に手伝えるかな? とちょっと心配だったけど、圭さんと並んでキッチンに立った。 「竜太君は普段料理するの?」 圭さんに聞かれるけど、この僕の包丁の手つきを見れば料理が出来ないってバレバレですよね。 「全然しませんね……圭さんは凄いですよ。僕は面倒くさくてダメです。料理をしようなんて思ったこともないですもん」 「俺だって初めは何にもしなかったよ。でも頑張って作ったのを喜んで食べてくれる人がいるとやる気が出るんだ。そうすると自然と面倒じゃなくなるんだよな」 そう言いながら、リビングの床で寝そべりテレビを見ている陽介さんを見る。 そっか…… 周さんも僕がお鍋作るの手伝ったって言ったら驚くかな? 喜んでくれるかな? 周さんがどんな反応をするのか考えたら、ちょっとわくわくしてきた。 「圭さん、色々僕にも教えて下さい!」 とりあえず、僕は圭さんに野菜の切り方から教えてもらうことにした。

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