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ぬくもり

周さんは寝る時もわざわざ別々の布団に潜り込み、僕には手を出さないようにしてくれている。疲れている僕を気遣ってのこと……それはわかってるし、その優しさは凄く嬉しいんだ。 ……でも、なんだか寂しい。 周さんは布団にすっぽり入り、僕に背中を向けている。ゆっくり休みたいと思う反面、構ってもらえないのが寂しいだなんて、我儘だなと嫌になる。 「周さん? ……寝ちゃいましたか?」 声をかけても返事はない。 「………… 」 周さんがその気になっちゃったらその時はしょうがない。いいんだ…… そう思って僕は周さんの布団に潜り込んだ。 だって目の前に周さんがいるのに、温もりを感じられないなんて寂しいから。 後ろから周さんにしがみつくと、ゆっくりと周さんが振り返る。「こらこら……」と僕から体を離そうとするから、慌てて捕まえて抱きしめた。 「イヤです。周さんと一緒に寝たいんです……ぎゅってしてください」 「………… 」 周さんは何も言わず、僕の頭を胸元に抱えるようにして優しく抱き締めてくれた。 ほら、あったかい。 周さんの心臓の音がトクトクと心地良かった。 僕は周さんの胸の中で、久しぶりに熟睡できた。 日に日に竜太の顔色が悪くなっていく── 俺は話をしながら竜太の目の下のクマを見る。本人はちっとも気がついていないんだろうけど。ストレスからなのか肌荒れも酷い。 圭さんの家で鍋を食べながら、竜太は俺の肩にもたれて寝てしまった。寝不足なのも一目瞭然。そのまま静かに横にさせ、膝枕をしてやった。寝心地が悪いかなとも思ったけど、下手に動かして起こしてしまっても可哀想だ。眠ってしまった竜太に気がついた圭さんが、ブランケットを掛けてくれた。 「竜太君、ちゃんと食べてくれてよかった。ちょっと痩せただろ? 目のクマも酷いし、なんか可哀想だよな……」 圭さんも心配してくれる。 しばらくして食事も終わり、靖史さんは家に帰っていった。 竜太は相変わらず、俺の堅そうな膝枕でスヤスヤと寝息を立てて眠ってる。 「それにしても、竜太君細いよな ……周、竜太君に無理させるなよ?」 陽介さんに含みを持たせた言い方で注意された。 わかってるよ。 わかってるけど、ムラムラしちゃうんだからしょうがないだろ。 「……陽介さんだってさ、圭さん小柄だし……無理させてんじゃねえっすか? 独り暮らしでヤりたい放題じゃん」 小声で圭さんに聞こえないように陽介さんに反論した。 「バカか? 俺はお前みたいに年中発情してねーよ。一緒にすんな」 馬鹿にされた……てかガキ扱いされてムカつく。 「何もセックスしなくたって、体を寄せ合うだけで気持ちが繋がって安心できる事もあるだろ?……お前にはまだわからないか」 「俺だって年中発情してるわけじゃありませんよ!」 ムッとしてると圭さんが寄ってきて焦ってしまった。 「何の話? ほら、そろそろ片付けるから陽介手伝って。竜太君起きそうならお風呂入っちゃいな」 圭さんは陽介さんの尻を叩き、俺を見る。竜太もモゾモゾ起きそうだ。 でも風呂…… 一緒には無理だな。絶対俺、弄くり回したくなる。 俺は竜太を先に入らせ、別々に済ませる。最後脱衣所で竜太に痣を見られ、触られてムラムラきそうになったけど、何とか抑えられた。 寝る時も、竜太に触れないように別々に寝る。 それなのに、竜太がゴソゴソ布団に侵入してきやがる。 んーーー 「ぎゅってしてください 」って……どんだけ可愛いんだよ。 耐えろ俺! 竜太を頭からぎゅっと抱きしめ、平常心を装う。今日はムラムラしない、大丈夫、ムラムラしない…… そう念仏を唱えていたら、すぐに竜太の寝息が聞こえてきた。 俺の胸の中で安心しきって眠る竜太が愛おしい。竜太の髪を撫でながら、いつの間にか俺もぐっすりと眠れていた。

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