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アピール合戦終了

今日も周さんと一緒に登校をした。横には陽介さんもいる。 周さんの言っていた通り、今朝は学校に着いてから誰からも声を掛けられなかった。 「おはよう。竜太君」 教室に入るとすぐに志音が声をかけてくれた。最近の志音は学校に来たり来なかったり。来てたって教室にいなかったりするから、朝からこうやって会うのは久しぶりかもしれない。 「……竜太君、ここ。今日はシャツちゃんと上までボタンかけた方がいいと思うよ」 志音が僕の首元に手をやりシャツのボタンをかけてくれた。首が窮屈だから一番上のボタンはいつもかけないし、皆んなだってそうなのに……何でだろう? と僕は少しだけネクタイを緩めた。 「上からだと、竜太君の首のとこ……痕が見えちゃうから」 にこりと笑い志音が言った。 あ……そうだった。忘れてた。 周さんにたくさん付けられたんだった。志音も背が高いから、上から覗かれると見えちゃうんだね。恥ずかしい…… 「あ、ありがと、志音」 「気を付けないと、竜太君にはこういう事してもいいんだって思われちゃうよ?」 もう既に知らない人にやられてるんだけどね。でも志音の言う通りだ。気をつけなくちゃ。 「それにしても久しぶりだね、志音が朝からいるの珍しい」 僕がそう言うと、志音は小さく溜息を吐き肩を竦めた。 「最近仕事の幅が広がっていろんな事やらせてもらえるようになったんだ。でも休んでばっかりで出席日数ヤバイって先生に言われちゃったの。今日は一日頑張って授業に出るよ」 そうだったんだ。最近の志音は、顔が生き生きしてて益々カッコよくなっている。男前すぎて羨ましいくらいだ。 「竜太君は今日も保健室行くの?」 行こうと思ったけど、昨日はぐっすりと眠れてスッキリしてるし、もう変な先輩達にも遭遇しなさそうだし、大丈夫かな。 「ううん、僕も今日はちゃんと授業受けるよ」 志音が「真面目な子が真面目な事言ってる」と言って声をあげて笑った。 今日は一日、びっくりするくらい平穏に過ごせた。 昼休みは志音も一緒に屋上へ行く。そして少し遅れて周さんも屋上に来た。 「お? 志音だ。珍しいな、久しぶり」 機嫌よく周さんが志音に話しかける。 「周さん、ダメですよ? 竜太君に激しすぎ。あんなの狙ってください言ってるようなもんじゃん」 周さんは志音の言葉に、何のことやらという顔をする。僕がキスマークのことだと教えてあげたら「はあ?」と大きな声を上げた。 「あれは竜太が襲われてキスマーク付けられたから俺が上書きしたんだよ! シャツ着てりゃ見えねえだろ?」 僕、志音には黙ってたのに周さんに言われてしまった。案の定、志音は驚いた顔をして僕の方を見た。 「襲われたの?? 嘘でしょ? ほんとマジでここの先輩達信じられない!」 「だろ? クソムカつくんだよ! でも俺がちゃんとぶっ飛ばしてきたから安心しろ」 志音が周さんに「さすが周さん!」と言い、周さんに手を上げハイタッチをした。 …………。 なんか二人、仲良くなってよかったな。 次の日もこの日と変わらず平穏に過ぎ、目立った事もなく一日過ごす。そして最終日の放課後、僕は掛け金をもらいに陽介さんと一緒に写真部の部室へ向かった。

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