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想定外
やっと先輩達のアピール合戦も終わり、僕は今周さんと一緒に圭さんの家にいる。僕を後ろから抱えて座ってる周さんは、すこぶる機嫌が悪い。
はい……
一週間前と丸っきり同じようなこの状況。今回周さんが機嫌が悪いのは、目の前にいる陽介さんが原因。
「何でだよ! 陽介さん、権利譲ってくれるって約束じゃん!」
「約束なんかしてねえし……」
昨日の放課後、僕は陽介さんと一緒に写真部に出向き、デート相手が決まった旨を伝えデート資金を受け取った。それをみんなで分けようかって話だったはずなんだけど……
なぜか陽介さんは、僕とデートすると言い出した。
「いや……万が一、青組が勝ったら竜太君が俺を選べるようにエントリーしてくれって頼まれたけど、権利を譲れとは言われてねえよ?」
周さんが後ろから僕をぎゅっとしながら「でも」とか「だって……」とか言っている。僕は別に陽介さんなら安心だからいいんだけど、周さんはやっぱり嫌みたい。
「なんだよ! 陽介さんも金が目当てかよ!」
陽介さんも一度決めたことを覆す気はないらしく、頑として譲らないと言って聞かないし、とうとう周さんは怒ってしまった。
実際もらったお金は五万円以上。エントリーが百五人と聞いた……こんなの尋常じゃない。
「はぁ? 違うって! 金目当てじゃなくて、俺は初めから勝ったら竜太君とデートするつもりでいたんだってば」
なかなか納得しない周さんに陽介さんも段々イライラしてるのがわかる。
「俺だって、竜太君が俺を選ぶって知った奴らから散々まとわり付かれて蹴散らすの面倒だったんだぞ? 迷惑被ってんだ。お前にひと言くらい詫び入れて欲しいくらいだよ!」
陽介さんの言葉にハッとする。僕ばっかり守ってもらったり気を使ってもらったり。でも陽介さんだって大変だったはず…… そこまで頭が回らなかった。
「陽介さん! ご迷惑かけました。僕、気がつかなくて……すみませんっ」
僕は慌てて謝った。
「え? いいのいいの、竜太君は謝らないで。俺は周に言ってんだよ」
陽介さんは笑ってそう言ってくれた。
「コーヒー淹れたよ」
周さんと陽介さんが揉めてるというのに、呑気な声で圭さんがコーヒーを持ってきた。
「いつまで揉めてんだよ」
圭さんも呆れ気味。
「だって、圭さん! 圭さんだってだめだろ? 陽介さん、竜太とデートするって言ってんだよ」
もう周さんたら、圭さんの方に体を寄せて訴え始めた。
「ばーか! 圭ちゃんだって了承済みに決まってんだろ。圭ちゃんがダメだっていう事なんかしねえよ」
「もう! なんでデートがオッケーなんだよ! 圭さんもおかしいの??」
だんだん周さんが駄々っ子みたいに見えてきた。
「いやさ、相手が陽介になんかしてやろうって気があれば勿論ダメだけど、相手は竜太君だろ? 何が問題? 竜太君は周の事を愛してるんだし、陽介は俺の事を愛してるわけだから、何も問題ないだろ。単に友達同士で遊びに行くってだけだろうが。デートっていう言葉を使うからおかしくなるんじゃね?」
圭さん、周さんを宥めながらサラッと恥ずかしい事を言った。でも圭さんの言う通り、やましいことなんか無いんだから全然構わないんだけどな。
「圭ちゃんだっていいって言ってんだから、いいだろ? いつまでも周うるさいよ!」
「………… 」
周さん、諦めたのかな?反論せずに黙っちゃった。
「竜太はどうなの? 陽介さんとデートでいいのか?」
周さんに聞かれ、僕は頷いた。陽介さんだってそう決めてしまったみたいだし、しょうがない。
「………陽介さん、竜太に手を出したらただじゃすまねえからな!」
出すわけねーだろ!と陽介さんが爆笑する。圭さんも苦笑い。
いつまでも機嫌の悪そうな周さんをよそに、明日の休みは陽介さんと遊びに行く事に決まった。
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