155 / 432
映画の内容は…
会場が暗転し、映画が始まった。僕はあまり興味がなかったから陽介さんの言った映画のタイトルを聞いてもどんな映画だかわからなかった。そう、ちゃんと聞いていなかったんだ。
ちゃんと聞いておけばよかった……
始まってすぐにホラー映画だと気がついた。初めての大スクリーンにドキドキしていた。ワクワクしていた。それなのに、僕はこれからどうしたらいいんだろう。
怖い、暗い。
音も大きくて心臓の鼓動が早くなる。
まだ始まったばかりだというのに、いきなりの恐怖の展開。僕はぎゅっと目を瞑り恐怖を誤魔化す。そんな事をしたところで何も変わることもなく、耳も塞いでも音はしっかり聞こえてきてしまう。それに一緒に観にきたのに耳なんか塞いでたら陽介さんにも失礼だ。
家のテレビでもホラー映画は怖くて見られないのに、この大画面、この大音量。もう半分パニック。主人公の背後からゾンビと化した友達がガーーッと襲いかかったシーンに僕はビクッと大きく反応してしまい、思わず陽介さんの腕にしがみついてしまった。一度しがみついてしまったらもう怖くて離れることもできない。
せっかく買ったジュースもチュロスも口に運ぶ余裕なんてない。そもそも僕のチュロスはどこに行ってしまったんだろう……もうどうでもいいや。
初めての映画館でまさかのホラー映画に大ショック。
目を閉じ陽介さんの腕にしがみついたまま恐怖に耐えてると、肩をトントンと叩かれた。恐る恐る目を開け見ると、陽介さんが僕を見ている。
「……もしかしてホラー映画ダメな人?」
陽介さんが申し訳なさそうに言い、僕の手を取り立ち上がった。
え……?
そのまま手を引かれ、僕らは映画館を出てしまった。
「ごめんな。苦手なら言ってくれればよかったのに」
いや、映画途中だけど……
「陽介さん、映画まだ 」そう言いかけると「おいおい……」と陽介さんは笑う。
「何言ってんの? 竜太君が楽しくないことはしないよ」
次はどこ行こっか?と僕の手を取り歩き始める陽介さんに僕は申し訳ない気持ちでついて行く。お昼までまだ時間も少しあるし、陽介さんはこの後特にどこに行こうかまだ決めていない様子なのでちょっと遠慮気味に提案してみた。
「陽介さん、僕……本屋さんに行きたいです」
僕がそう言うと、陽介さんは嫌な顔をすることなく「了解!」と言って本屋に付き合ってくれた。
ともだちにシェアしよう!