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どうしてこうなった?康介の憂鬱

俺は何をやってるんだ? どうしてこうなった── 俺の目の前にはアイスコーヒーをストローでブクブクとやってる超絶不機嫌な周さん。 めっちゃ沈黙…… 俺はこの状況にどうしたらいいのかわからずにいる。周さんはブクブクやるのをやめてアイスコーヒーを半分ほど吸い込んでから顔を上げた。その目線の先に俺はいない。周さんが見つめているのはそのずっと先、向かい合って座り楽しそうにコーヒーを飲む俺の兄貴と竜だった。 朝っぱらから俺の携帯に入った周さんからのメッセージ。『今から行く』のひと言のみ。なんだこれ? と思ったのも束の間、いきなり周さんに押しかけられた。 「康介、行くぞ!」 「へ? どこへ?」 訳がわかんないまま周さんに連れてこられて、全く理解が追いつかないままこうして周さんとコーヒータイムを楽しんでいる。いや……楽しんではいないけど。 周さんは俺と会ってから全く喋っていない。「康介、行くぞ!」しか声を聞いていなかった。 ずっと黙ってる…… まぁ、周さんが何をしたいのかは一目瞭然だけど。 目の前にいる周さんは、これは変装つもりなのかな? 特徴のある派手な髪の毛が隠れるようにニット帽を深く被って黒縁の伊達メガネまでかけている。いや、普通にかっこいいからね? 周さんも志音みたいに長身でモデル体型だろ? これ逆に目立っちゃってるよね? って思うんだけど、余計なこと言って怒らせても面倒だし黙っていた。あのニット帽とメガネさ、俺が着けたらちんちくりんで絶対笑われるよな……クソ、なんかムカつく。 まぁ、一番目立つあの金髪が隠れているからいいんだけど、背の高さもあるしどうしても目立つよね? 尾行がしたいなら細心の注意をしないといけない。そんな強力目ヂカラでガン見してたら、気配で気付かれそうでヒヤヒヤする。 「あの…… 周さん? どうしたいんですか? 今日は一日尾行っすか?」 とりあえず周さんのしたい事はわかっていたけど一応確認のために聞いてみた。ずっと見ていた竜から目線を外し、やっと俺の顔を見る周さん。 え? なにその「お前いたの?」 的な顔。ありえねえ…… しかも俺の質問に、返事は「ん」とだけ。目も合わさずに超適当な返事をされた。ちょっとカチーンときちゃったけど、周さんの顔を見て一気に怒りの感情が消えて行く。だって周さん、顔が真っ赤。一応恥ずかしいことしてるって自覚はあるんだな。可愛いとこあるじゃんって笑いそうになっちまった。 「あんまり見てるとバレますよ……」 俺の言葉に、体を少し縮こませる周さんがちょっと可愛く見えた。 ……この人どんだけ竜に夢中なんだろ。 俺が心の中で周さんに色々突っ込んでいると、周さんが「あっ」と小さく声を上げた。

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