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困った先輩二人
体育祭からの怒涛の一週間も無事に終わった。それからは何事もなくいつもの日常。
今日はお天気も良くて気持ちがいい。すっかり秋めいてきて肌寒い日も多いけど、今日の屋上はお日様があたってポカポカと気持ちがよかった。
僕はお弁当を食べながら、目の前で話をしている修斗さんと康介を見ていた。
「もー! 俺は関係ねえのに、何でいっつも面倒な事になるんですかね? ね? 聞いてる?」
康介はぷりぷりとお怒りモードで修斗さんに突っかかってる。修斗さんは修斗さんで、そんな康介を気にもしないでサンドイッチを頬張っている。
最近の康介と修斗さんはやたらと仲が良い。いや……仲が良いというか、一方的に修斗さんが康介にちょっかいを出してくるといった感じ。昼休みだけじゃなく、休み時間にも一年のフロアに顔を出す程。
「しょうがないじゃん、そんな怒るなって……なんか俺、最近付き合うの面倒くさいんだもん。康介君は関係ないよ」
修斗さんが康介を宥める。
「はぁ? そんなら皆さんにそう言って下さいよ! 俺は関係無いって」
どうやら修斗さん、毎日のように誰かしらとデートをしてたのに、ここのところ康介にばっかり構っているので、修斗さん目当ての人が寄ってたかって康介に文句を言いにくるらしい。学校外の女の人にまで文句を言われちゃ堪らないよね…… いい迷惑だ。
「だからね! お誘いを断る口実に俺の名前を出すのを今すぐやめて!」
パックの牛乳を勢いよくストローで吸いこみ、一気に飲み干して康介がそう言って睨む。
……鼻の穴、また膨らんでる。
怒っている康介とは対照的に修斗さんはケラケラと笑い「それは本当の事だからしょうがないじゃん」と言って怒っている康介に顔を近付ける。康介は「ふんっ」と外方を向くけど、修斗さんはわざわざそちらの方を覗き込み「プリプリすんなって」と言っては康介の肩を叩く。
仲が良さそうなのはいいんだけどね。康介は本気で嫌そうだから何とかしてあげたいな……。
「じゃ俺はそろそろ俺行くね。またね 」
一頻り康介を構った修斗さんはそう言うと、手を振り屋上から出て行った。
僕は食べ終わった弁当を片付けながら、外方を向いたままの康介に声をかける。
「修斗さんも困ったもんだね……」
振り返った康介は見たこともないくらいの情けない顔をしている。ちょっと可笑しい。
「あれな、絶対俺の事おちょくってんだよ。俺の事イジってそんなに楽しいかな……」
先程までの威勢は全く無くなりションボリとしちゃってる康介が益々可哀想になってきた。
「修斗さん、康介が可愛くてついつい構いたくなるんじゃないの?」
見てると正直そう思う。修斗さんは康介が可愛いからああやってちょっかいを出してるんだと思うんだ。でも僕がそう言うと、益々康介はションボリしてしまった。
「……竜に可愛いとか言われたくないし。それにそんなんじゃねえよ……修斗さん、単に俺の事を新しい玩具くらいにしか思ってねえんだって」
深い溜息を吐いた康介は、横に置いてあったメロンパンをやっと口に運び食べ始めた。
「それよかさ、周さんどうしたの? 最近全然見かけないよな。あの人、学校ちゃんと来てんの?」
メロンパンのカスをポロポロこぼしながら康介が僕に言った。
「……全然会ってない。康介パン屑さっきから落ちてるよ」
今度は僕がちょっとムッとする。だってほんと康介の言う通り周さんとは全然会えていなかった。連絡すらない。学校に来てるのかもわからないし電話をしたって出てくれない。
そう、ここ三日間全く連絡が取れなくなっていた。
……どうしたんだろう。
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