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康介と修斗さん
今日も周さんとは会えていない。勿論連絡も来ていなかった。
休み時間になると廊下がまた賑やかになる。席に座ったまま廊下の方へ目をやると、やっぱりそこには修斗さんがいて、何人かの一年生に囲まれ楽しそうに話をしていた。
「康介、修斗さんのとこ行かないの?」
僕が聞くと、目を丸くして顔をぶんぶん振る康介。
「いやいや、むしろ隠れるわ……」
そう言うと康介は机に突っ伏して寝てしまった。修斗さん、他の人と喋っているけど康介に会いに来たんじゃないのかな? それに僕、修斗さんに周さんのことを聞きたい。今日は学校に来ているのかどうなのか……でもあの人集りには近づきにくいや。そう思った僕は修斗さんのところに行くのは諦めて読書を始めた。
視線を感じ、顔を上げると目の前に修斗さんの顔があって驚く。
「……うゎっ! 修斗さん、いたんですか?」
びっくりした。
「康介君さ、全然起きないんだよ」
つまらなさそうに修斗さんが言うけど、多分康介は寝たふりをしているんだと思う。
「ねえねえ、今日さ放課後三人で遊び行かない? カラオケでも行こうよ」
修斗さんに誘われ、僕は机に突っ伏してる康介を見る。寝たふりを決め込んで顔をあげない康介。
── このまま無視する気だな。
「いいですよ。放課後、門のとこで待ってて下さい、一緒行きましょ」
僕が言うと、修斗さんは嬉しそうに笑って二年の教室へと帰っていった。
「………… 」
「ちょっと! なに約束しちゃってんのさ。俺の意見は無視かよ!」
いやいや、意見も何も無視したの康介じゃん。
「どうせ暇なんでしょ? 折角だから一緒に行こうよ。僕、周さんのことも修斗さんに聞きたかったし……」
放課後、渋々頷いた康介を連れて僕は修斗さんと一緒にカラオケに向かった。三人で並んで歩く。歩きながらやっぱり修斗さんは僕そっちのけで康介にばかり構っていた。
カラオケ店に到着し、部屋に入ると修斗さんはすかさず康介の隣に引っ付いて座る。康介は少し嫌な顔をしながら、ずりずりと修斗さんから離れるように座ったまま横に移動……それを修斗さんが追うようにまた康介に寄ってくもんだから、康介は壁際に追い詰められてしまった。
……見てると凄い面白い。
「ねぇ、二人でそんなに端っこにいないで……何か飲み物とか注文します?」
僕は笑いを堪えて二人に聞いた。
「ビール!」
「おいおい、ダメでしょ!……制服ですよ」
康介が突っ込みをいれる。やっぱりこの二人は仲良しだ。
カラオケと言っても僕は流行りの歌とか全然知らないから専らみんなの歌を聴く専門。修斗さんも凄く上手くて惚れ惚れしちゃう。康介も修斗さんの歌声に静かにリズムを取りながら気持ちよさそうに聴いていた。
修斗さんが歌い終わると、僕は気になっていた事を聞いてみた。
「ねぇ、修斗さん。最近周さんと一緒にいないんですね。どうかしたんですか? ……僕、周さんと全然会えてないから気になってしまって」
「………… 」
修斗さん、聞こえなかったのかな?
「……あ! ねえ、お腹空かない? なんか食べようよ」
「………… 」
ちょっとなに? 本当に聞こえなかったの? 目を見て僕、話しかけたけど……
「修斗さん? 僕周さんの事聞いたんだけど……聞こえませんでした?」
「……え?」
なんだ? やっぱり聞こえてたし、それに修斗さん目が泳いでる。
僕、なんか聞いちゃいけないこと聞いちゃったのかな? 白々しく話を逸らされてしまってモヤモヤした。
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